ヒトデナシ
トロイメライ 1 - 1

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サンダルを履き、重いドアを押し開けて外へ出る。途端にむっと真夏の熱気が押し寄せてくる。玄関先には折れた枝やちぎれた葉っぱが散らばっている。夜のうちに通過して行った季節はずれの台風の痕跡だ。 その惨状の中に何かあった。それに近寄り、スカートの裾が汚れないようにたくし上げてからしゃがんでみる。くすんだブルーの木の箱だった。アカシアの木の高いところに取り付けてあったはずの鳥の巣箱だ。大風に耐えきれずに落ちてしまったらしい。地面にぶつかった衝撃で屋根が壊れてずれている。

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