ヒトデナシ
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結婚してから三年になる。 勤務医の樹はいつも帰りが遅い。夜勤も当番で回ってくる。看護師だった陽菜はそんな夫の事情をよくわかっていた。ついでに言うなら二人が出逢ったのも同じ病院での勤務を通じて、である。 「あなたと結婚する前、まだ看護師として勤務していた頃に知り合いが教えてくれたの。会員制の通信販売でおいしくて安全な農家さんがあるって」 「ふうん。そういえば聞いたかもしれないね」 「医師は激務だから健康が一番でしょう。医者の不養生という諺もあるし。だから…」 ダンボールにはじゃがいもや新鮮そうな玉ねぎやピーマンなどが詰まっていた。野菜と一緒に入っていたパンフレットを、陽菜は夫に渡す。
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