「こちらはエルピーダ。今宵もエルピーダからお送りしています。地球はそろそろ夏ですね。夏といえば家族で海に行ったのを思い出します。どこまでも青い空と蒼い海と、潮風が…」 もう、海も空も青くないだろう。大量に使用された核兵器の影響で、きっと今でも黒い雨が降り続いている。 私以外のクルーは戦争が勃発した初期に地球へ戻っていった。植物学者である私はエルピーダの根幹を支える生物循環システムの責任者でもあることから、いわば留守番としてここに残った。