ヒトデナシ
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またあのノックの音が響いた。しかし彼よりも先に、寝ていたはずの真里絵が跳ね起きた。ベッドの隅にうずくまりぶるぶる震えている。かっと見開いた目はドアに注がれている。 コン、コン。コン、コン。 「そこ、る、のは、れだ」ドアの向こうであの声がした。 「そんな。そんなはずは」放心したように真里絵がつぶやいている。彼は変な気がした。今までは真里亜の亡霊がやってきても真里絵は何の反応も見せなかった。それなのになぜか今日はおびえている。 「真里絵。きみにもあれが聞こえるのか」 「違う。そんなはずはない」 「違う?きみはいったい何を言っているの」 真里絵が立ち上がった。彼を見ていない。そのままドアに走っていく。
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