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「き、きみは」 「早くわたしを抱いて」 「真里絵か。真里絵なんだな。無事だったのか。よかったよ」 背中がなんだか湿っぽいような気がしたが、転落したはずの真里絵が無事だとわかり、安堵した彼はふと浮かんだ疑問を忘れた。 真里絵を抱き上げベッドに運ぶ。服をぬがせて裸にしながら、なぜ服が濡れているのか、そのワンピースをどこかで見たような気がすることも、すぐに彼の記憶から消えた。 白い裸身を組み敷いて、急にその身体が氷のように冷たく感じた。それも一瞬だけで元の体温に戻る。彼の口づけが首筋へ、やがて下へ降りいく。 「ああ。やっとこれで」女が何か言っている。ため息のようなそのつぶやきは彼の耳には届かない。彼女を抱くことしか考えられない。 すると…。  コン、コン。コン、コン。  ノックの音がした。  コン、コン。コン、コン。  コン、コン。コン、コン。

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