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 あれから十数年の時を重ねた。  当時、男の子とは毎日森の中で会い、短い時間だけ遊んでいたように思う。今思えば彼は妖精ではなく普通の男の子だった。ドイツに来た私が、父親以外で唯一日本語で自由に話すことのできた相手。彼の存在は私の中で大きかった。彼のおかげでドイツを嫌いにならずにすんだのだから。  彼はまだあの森にいるだろうか。丘の上から見下ろす森の木々は、大人になって見ても大きい。これほど立派な大木が多いということは、数百年と切られずに生きている木が多いという証拠だ。そんな森を見ているだけで嬉しくなる。  でも、 「まずは、腹ごしらえをしないとね」  そうひとりごちた私は、丘を軽やかに駆け下りて町の入り口を目指した。  幼い頃は父親について歩くだけだった町の中は、見るものが全て初めてのように感じた。三年間は住んでいたはずなのに私の記憶には何もかもが残っていない。父親と歩く時はいつも下を向いていた気がするから、無理もない。  入り組む大通りや小道を気の向くままに歩き、パン屋を探す。ドイツに来たらまずプレッツェルを食べなければ始まらない。幼い頃に口にしてから、ドイツのプレッツェルは私のソウルフードになった。あのニスを塗ったような艶やかな表面に、香ばしい小麦の香りがたまらない。食べればもっちりと柔らかく、少しだけ乗せられた岩塩が小麦の甘さを引き立てる。  パン屋なんて町を歩いていたらきっとすぐに見つかるだろうと思っていたのに、一時間近く歩いても見つけることができなかった。私の歩く道が悪いのか、それともこの町にパン屋が少ないのか。  軒を連ねる小さなショップは、雑貨屋に土産物屋、タオルケットが山積みになっている店に、キャンドル屋。やっと見つけた食べ物屋には、ショーウィンドウにカラフルな名物菓子のシュネーバルが並んでいる。これは昔に食べた記憶がある。確かドーナツのようなホロホロとした生地がマフィンのような形をしていて、上にチョコレートやナッツ類のトッピングがされているものだ。並んでいるシュネーバルを見ているだけで口の中にその甘さが蘇る。プレッツェルではないけれど、とりあえず一つ購入することにした。  店の中に入り注文をすると、店員はショーケースの中から大きなシュネーバルを一つ取り、紙袋に入れてくれた。それを持って店の外に出ると、またプレッツェル探しの旅が続く。  もっとメインストリート沿いを歩いてみよう。パン屋はみんなが求めているだろうからわかりやすい場所にあるのかもしれない。  大きな通りに出ると、今までの小さな店より少しだけ背の高い建物に差しかかった。薄い土色の煉瓦でできた壁沿いを進むと、分厚そうな木の扉が壁にくっついている。天辺が半円形になり、両開きのタイプの扉だ。その扉の近くに、「Hotel」の文字があった。  Hotelはドイツ語でもHotelだ。綴りも一緒。ただ、ホテルと呼ぶには小振りな印象を受ける建物だった。急な角度の三角屋根と、こじんまりとした佇まいが愛らしい。それに、おとぎ話に出てくるような重厚な木の扉が付いているものだから私は一気に心を惹かれる。中を覗いてみたいけれど、扉を開ける勇気はないのでしばらく周辺をウロついた。  すると、扉の向こうに小さな窓があることに気が付いた。どうか客室の窓ではありませんようにと祈りながら近寄る。  そうっと中を覗きこむと、ウォルナットのような深い木の色が印象的な室内が目に入る。部屋の端にはカウンターが見えた。人の気配はない。  誰もいないことを良いことに、窓から中の様子をじっくりと観察する。見えているのは扉の向こうのエントランスみたいだ。バラのような黒味がかった赤色で縁取りされた絨毯が床を覆い、高い天井には小さいけれど上品なシャンデリアがかかっている。その奥には木の螺旋階段があり、階段から見てカウンターの反対側には赤い煉瓦で作られた暖炉があった。今はその暖炉に火は灯っていない。外観と同様に全体的に小さくまとめられた印象はあるものの、その小ささが愛らしい世界を作り出している。それは久々に見るドイツらしい美しさだった。  街行く人々の視線も気にせずに室内に見惚れていると、隣で重厚な扉が開く音がした。慌てて振り向くと、白髪のおばあさんがホテルに入って行く。  窓を覗いておばあさんを観察すると、おばあさんは迷わずカウンターまでゆっくりと歩いた。カウンター上のバスケットから何か茶色いものを二つ手に取り、カウンターの奥に向かって話しかけている。  すると、奥の部屋から人がでてきた。その人は焦げ茶色の髪の毛を頭のつむじのあたりで一つの大きなお団子に結い上げている。おばあさんと一言、二言、言葉を交わし、一度カウンターに隠れるくらいしゃがみ込んで、立ち上がった時には白い紙袋を持っていた。  おばあさんが手に持っていたものをお団子頭の女性が受け取る。白い紙袋が背になった時にそれがはっきりと見えた。  バスケットの中に入っていて、今まさに白い紙袋に入れられているのは、私が探し求めていたプレッツェルだった。  その後の光景は窓から見ていない。プレッツェルがこのホテルの中にあるとわかり、私の足は自然と木の扉へと向かっていたから。  扉の前まで来ると、ちょうど扉が開かれた。内側から誰かが開けている。重たそうな扉から頭を覗かせたのは、白髪のおばあさんだった。おばあさんはゆっくりと、扉を懸命に押している。咄嗟に扉を外から引っ張った。軽くなった扉に驚いたのか、おばあさんが顔を上げる。私が扉の端に避けると、 「ダンケシェーン」 と声をかけられた。ブルーの瞳が笑っている。白い紙袋を持ったおばあさんは、背中を丸めてそのまま道を歩いて行った。  開けたままの扉に目を戻すと、カウンターにいたお団子頭の女性と目が合った。女性は私に「ハロー」と声をかけてくる。私も「ハロー」と返すと、私の小さい声は室内に吸い込まれた。カウンターの女性は、明らかに私の次の行動を待っている。  その視線に促されるようにホテルに足を踏み入れると、深紅の絨毯が柔らかく私を出迎えた。カウンターに近づきバスケットの中を確認すると、均一に茶色く光るプレッツェルが並んでいる。それはまるでこの土地に溢れる木々の幹を思わせる色合いで、ぐるっと編み込まれたハート型が愛らしい。  やっと巡り会えた瞬間だった。この街のプレッツェルに。あのおばあさんが中に入ってくれたおかげで見つけることができた。窓の外からではバスケットの中までは覗くことができないから。  私はお団子頭の女性にプレッツェルを指差して、それから「一つ下さい」とドイツ語でお願いした。簡単なドイツ語ならば脳」と言うより口が覚えている。女性は少し驚き、それから笑顔で金額を伝えてくれた。私は財布からコインを取り出す。  それを受け取ると、女性は 「ダンケシェーン」 とだけ言ってまたニコニコと微笑んだ。  しかし困ったことに、一向にプレッツェルを包んでくれる気配がない。忘れているのだろうか。  私が何も出来ずにただバスケットの前で困った笑いを顔に浮かべていると、女性は「どうぞ」と声と手で合図した。プレッツェルと、私の手にしていた焼き菓子の紙袋を交互に指差している。  よくわからない。このお菓子とプレッツェルに何の関係があると言うのだろう? もしや、プレッツェルの見返りにお菓子を寄越せとでも? いやいや、それはあり得ない。だってついさっき支払いを済ませたもの。  困惑に困惑を重ねていると、女性がカウンターの下にしゃがみ込んだ。立ち上がると白い紙袋を手にしている。  「これが欲しい? 10ツェントだけど」 そう早口のドイツ語で言った。  それでようやく彼女の意図を理解した。ここで紙袋を買うと余分にお金がかかってしまうから、このお菓子の袋に一緒にプレッツェルを入れたらどうかと言っているのだ。しかもそうすることがまるで当然かのように。  流石はエコの国だ。エコバッグを持ち歩かないといけないことは知っていたけれど、こんなところでもその精神に触れることができるなんて思いもよらなかった。  私は大げさに「感心した、やっとわかった」というように「なるほど」とドイツ語で繰り返し、バスケットから手掴みでプレッツェルを一つ取り出してそれをシュネーバルの袋に入れた。  顔を上げると、お団子頭の彼女がもう一度「ダンケシェーン」と言ってくれた。私も「ダンケシェーン」と返してみる。ドイツ語は発音が難しい。  ホテルの外は雲が抜けて青空が広がっている。私は上機嫌で紙袋を持ち歩き、途中でコーヒーも買って借家に戻った。  食べてみると、プレッツェルもシュネーバルも私の胃と心を充分に満たしてくれた。苦みの強いコーヒーとの相性も抜群に良い。諦めずにプレッツェルを探して正解だった。あのホテルに立ち寄って、大正解だった。  それにしても、ホテルであんな風にパンが売っているのには驚いた。バスケットの中にはプレッツェルだけが数個並んでいて、他のパンは一つもない。売り切れてなくなってしまったようにも見えなかった。ホテルメイドのプレッツェルを毎日街の人に向けて販売しているのだろうか。カウンターの上のあのバスケットで。  わからないけれど、慣れ親しんだ日本の文化と違うところがあればあるほど私はドイツを好きになる。この国の控えめな自由さが私には心地良い。  今部屋をお借りしている家主のマイスターも、本当はお父さんから 「私を鍛えて欲しい」 と言われているはずなのに。  私が 「お父さんの言うことは気にしないで」 と言うと、マイスターは笑って 「わかったよ。好きなだけ遊んでおいき」 と言ってくれた。ありがたかった。  お腹が満たされたから、早速森へ出かけてみよう。町から少しだけ離れたマイスターの工房からは、森は目と鼻の先にある。  私は、あらかじめマイスターに  「この町に日本人とドイツ人のご子息はいますか」 と尋ねていた。小さな町だから、ずっとこの町に住んでいる高齢のマイスターなら知っているのではないかと思って。するとマイスターは、  「ああ、確かにいるよ。この先の森の入り口に小屋を建てて暮らしているさ。訪ねてみるといい」  そう教えてくれた。  その人はきっとあの男の子に違いない。そんな予感がした。大人になって自分で小屋を建てたのだろう。  会えたら、何を話そう。私のことは覚えてくれているかな。  小さなサコッシュを肩から下げ、スニーカーのつま先をコツコツと地面に叩いてから玄関を開けた。  一本道を歩いていく。太陽光を遮るものは何もない。小石が転がる砂の道に、真上から降り注ぐ太陽の光が反射している。全方向から太陽光を浴びて歩くけれど、春先の太陽はそれほど驚異的な暑さにはならない。それにドイツは日本と比べると湿度が低いから、夏でもそれほど暑くはならないだろう。  十分くらい歩いた道の先に、確かに小屋はあった。円筒形の外壁に円錐形の屋根がくっついていて、まるでえんぴつの先のような形をしている。敷地の周りを木の柵が囲んでいて、まさしく妖精さんが住んでいそうな家だ。  木の柵は一部が解放されていて、そこから敷地の中に入ることができた。柵の前にブザーのようなものは無いので、直接ドアをノックすることにする。ドアには青銅で作られたドアノッカーが付いているので、緊張しながら二回ほど叩いた。  数十秒待ってみたけれど、人が出てくる気配はない。ドアノッカーが思ったよりも音が出なかったので、もう一度叩くことにした。  コンコン  ドアから一歩後ろに下がり、髪の毛を手櫛で整えて待つ。けれどもやはり中から人は出てこなかった。  「留守かな」  残念だけれど、仕方がない。日を改めて出直すことにしよう。  木の柵を出て小道に戻ると、そこはもう森の入り口だった。針葉樹と広葉樹が交互に立ち並び、競い合うようにして空へ空へと幹を伸ばしている。遙か上空に茂る深緑の葉は風に揺れていて、枝葉が揺れる度に私の耳には葉が擦れ合う乾いた音が届いた。枝葉が揺れている様子はとても気持ち良さそうで、まるで赤子が母親の腕の中でゆらゆらと揺れているみたい。  風は、後ろから吹いて優しく私の背中を押す。  おいで  森が、木々が、私を呼んでいる気がした。森から遠ざかって過ごしてきた人生。何年ぶりになるだろう。ドイツの森なら、ここなら私は入ることができそうだ。足は自然と森の中へ向かっていった。  ドイツの森には、太い大きな道路が走っている。木材の輸送用に作られた道で、舗装された道を歩くだけでも十分に森林浴を堪能することができる。けれども、私は太い道から細い道へとどんどん進んで行った。今までの明るさが一気に無くなる。薄暗く、木漏れ日はごくわずかで少し肌寒くなる。  細い道の中は、それまでとはまた違った空気が流れていた。少し湿っているような、それでいて爽やかな清涼感もあるような、そんな空気。あまりにも瑞々しい空気だから、川の流れの中に身を委ねているような感覚さえしてくる。  立ち止まり、目を瞑って感覚を研ぎ澄ました。鼻から息を深く吸い込み、口から長く、細く息を吐き出す。そうしていると、ここがどこだかわからなくなりそうだ。さわさわと葉が囁く音と、遠くで鳴く鳥の声が聞こえる。  すると、そのうちザクザクと柔らかな土を踏む足音が聞こえてきた。一人や二人ではない。足音の隙間から人々の語らう声もする。耳をすませると、それは聞き馴染みのある日本語だった。  「みなさん、一度ここで立ち止まってみましょう」  優しく、ハツラツとした声が森の中に響きわたる。声のする方へ行ってみると、初老の男性が八人くらいの人を引き連れてなにやら話をしていた。みんな日本人のようだけれど年輩だ。妖精さんらしき年齢の人は見当たらない。  「あの樹木をご覧ください。  何か気が付くところはありますか」  初老の男性は先頭に立ち、ブナの大木を指差した。直径が1メートルはありそうな幹で、背の高さは30メートルほどにも及ぶ。  立派。そういう言葉が容易に頭に浮かんだ。  けれどもそういう感想を求められているわけではないということは察しがつく。大木を眺める人々のうち、一人の女性が声をあげた。  「幹の上の方に小動物の巣穴がありますね」  私のいるところからは流石にそこまでは見えないけれど、周囲の人たちが上を見ながら頷いている。  「そうです。その通りです。  素晴らしい目をお持ちですね」  とりあえず気が付いたことを口にしただけだけみたいに見えた女性は、初老の男性に思わず誉められて恥ずかしそうにハニカんだ。  あんなに大きな穴が開いているな、とか、何の巣穴かしらね、とか、口々に話す声が聞こえる。すると、後ろの方に居た男性が手を挙げながら質問した。  「木は体に穴が開いてしまっても、何も問題はないのでしょうか」  その疑問は木の身体を心配したものだった。木は往々にして鳥や小動物の巣穴としてその身を提供しているけれど、木だって立派に生きている生命体だ。確かに身体に穴が開けば、問題があるのかもしれない。  彼の疑問を聞いた時、団体の前にいる初老の男性はたちまち嬉しそうな表情になって語り始めた。  「心配をしていただき、木々もさぞかし喜んでいることでしょう。実のところ、身体に穴が開くことは樹木にとって痛みを伴います。問題は大ありです。  体に穴が開けば痛いし、葉を虫達に食べられれば樹木も痛みを感じることがわかってきております。自らの四肢が損傷を受けているのですから、痛いのも当然でしょう。  ですから、例えば自らの葉が誰かに食べられるということは樹木にとって災害そのもの。その災害を、樹木達は互いにコミュニケーションを取りながら回避行動を取るということが、私たち森の守り人の間では知られています」  「樹木がお互いにコミュニケーションを取るのですか? それはどうやって?」  誰かがすかさず質問をする。初老の男性は辺りの木々を目を細めて眺めながら続けた。  「会話です。樹木たちは会話を通してお互いにコミュニケーションを取ります。ですが木々の声はとても小さい。私たちには樹木の声を聞くことはできませんので、樹木たちがどのように会話しているのか、順を追って話しましょう。  樹木の会話方法は、大きく二つあります。一つは根を介して行う方法で、もう一つは芳香物質を使用するもの。  根から他の木々へメッセージを送る場合、樹木は地中の菌糸を頼りにメッセージを伝達します。根から根へ、菌糸が郵便配達人のようになって樹木からの手紙を他の樹木へ届けてくれるのです。  ですがこの方法は実に時間を要します。災害時には早急な対処が求められますから、根を介する会話は不向きです。  そこで、より早く、より多くの樹木達にメッセージを伝える手段が樹木にはあります。その手段に必要なものが、芳香物質です」  初老の男性の話は止まらない。他の人々は手にした筆をメモに走らせながら聞いていたり、何度も何度も頷きながら聞いていたりした。  「例えば、今このブナの木が害虫にやられてしまっているとしましょう。するとブナはエチレンガスという警報ガスを発散させ、災害を周囲に知らせます。エチレンガスは風にのっておよそ数百メートル先まではこのメッセージを届けることができるでしょう。  そのようにして警告を受けた樹木たちは、自らの葉も食べられないように準備を始めます。葉の中に有毒ガスを蓄えるのです。そうして森林の樹木たちは害虫から身を守り、全滅することを避けています。コミュニケーションのなせる、生きる術です」  話が終わると、おお、素晴らしい、という感嘆の声が人々から漏れた。  木々が会話している、そんなメルヘンチックな話が本当に存在していると初老の男性は言う。  それが本当だとしたら、木にとって災害をもたらす人間の場合はどうだろう。森の中にチェーンソーを持った人が入って来たとして、害虫の時と同じように、 『人間が来たぞー。木を切る人間が来たぞー』 と木々が芳香物質を使って会話をしているということはあるのだろうか。  そうだと嬉しい。木が切られまいとして、身を堅くする術を持っていたとしたら、なお嬉しい。そんなことを考えてから、頭を横に振ってその場を離れた。  団体から離れるように道を選んで進んでいくと、日陰の濃い場所に切り株を見つけた。苔が生え、朽ちかけの切り株。手で上の泥を払うと、少しだけ年輪が見えた。年輪は木の生きた証。  木は、切られるために生えているのではない。切られて良い木なんて世界に一本も存在しない。それなのに、人は自分たちで植えた木だから大丈夫という大義名分を掲げたり、病気の木だからという理由だったりで平気で木を切り続ける。木の命を奪っている自覚が足りない。そのせいで世界の緑は激減し、温暖化や異常気象にまで発展しているかもしれないのに。もっと一本の木を大事にできる道が欲しい。どうしたらその道は開かれるのだろう。  考えても見つからない答えに私はモヤモヤし、自分の非力さに嫌気がさした。目の前の朽ち木の切り株にさよならをして森を後にする。  その日の夜、マイスターの家に帰ってからサコッシュの中身を取り出していると、確かに中に入れたはずのハンカチが見当たらなかった。おばあちゃんにもらった大切なハンカチだから無いと困る。スーツケースの中を全て探しても見つからない。きっと森の中に落としてきたんだ。  今日はもう夜も深いから、明日また森に出かけてみよう。  無くしモノをした夜というのは、早く見つけに行きたい衝動でそわそわしてなかなか寝付けなかった。

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