作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 それから、私が庭先に広がる森に入って遊ぶことはほとんどなかった。森に入ればいつかまたおじいちゃんとお父さんが木を切るところに出くわしてしまうと思うと、私の足は森に向かうことを拒絶するようにすくんでしまうのだった。  切られる木を見るのは辛い。  切られた後の木を見るのはもっと辛い。  木の悲鳴と、倒れた時の音は今でも私の耳に染み着いている。  あの時、私はお父さんが木を値段でしか見ていないことを知った。あの人にとって、木は儲けるための道具でしかない。  それから年齢を重ねるにつれてお父さんやおじいちゃんの仕事を見るのも嫌になり、大学は地元から離れた場所を選んで入学した。  だけどやっと親元を離れられて、森からも遠ざかることができたというのに、私が選んだ大学の学部は建築学だった。幼少期の体験というか、見聞きしていたものは身体に染み着くから恐ろしい。私にはおじいちゃんやお父さんみたいな何かを作り上げる職人以外に道が考えられなかった。  でも、おじいちゃんやお父さんのように木材を扱う仕事だけはしたくないと心に誓っていた。お父さんみたいに、木を値踏みしながら見るようになんてなりたくない。だから木を使わない建築士を目指すつもりだった。  それなのに、どうしてこうなってしまったのか。  ドイツに送りこまれて、マイスターの元でまた暮らしている自分がほとほと情けない。  私には、たった一人の親であるお父さんの言うことに強く逆らう勇気がない。いつも私に無関心なお父さんが、稀に見せてくれる私への関心を、踏みにじることができない。もしそれをしてしまったら、お父さんは私のことを本当に見放してしまう気がしているから。  私は、成人してまでも親の敷いたレールに乗っている自分が本当に嫌いだ。  「でもさ、葉ちゃんは樹木が大好きなんだから。樹木からできたテーブルとか、机とか。家の内装とかも大好きでしょう?」  妖精さんが両手を広げるような仕草をして、視線をぐるりと部屋中に回す。まるで僕の家をよく見てごらん、と言っているような目だ。  よく見なくても、もうとっくにわかっている。妖精さんの小屋は完璧な木造住宅だ。フローリングにはナラの美しい木目が映え、壁や天井に使われているスギが室内を明るく包む。ウォルナットの深くて渋い茶色はキッチンや扉に配色されて良いアクセントになっていた。  それから、室内の小物だって大半のものが木製でできている。木製の壁掛け時計に、木製のソファ、木製のランプに、木製のテーブルウェア。どこを見ても木材だらけ。目を瞑っていたって家中が木のぬくもりと日だまりのように暖かな香りで満たされている。  そんな妖精さんの家からは、木の悲鳴は聞こえてこなかった。それどころか、家に居るだけで朝のコーヒーをお気に入りのカップで一杯いただいているような、心がほっと満たされる感覚さえする。  私はこの家が好きだ。木に包まれているこの家が、嫌いなわけはないんだ。  「嫌いなわけないよ。木が好きなんだもん。木目が見えるだけで愛しいと思う。大事にしたいと思う。  でも、私が手に取っちゃいけないものだとも思う。木の伐採を憎む私が、木製のものを好きだなんて矛盾してるもん。  動物を愛する人がベジタリアンやヴィーガンになるのと同じで、木を愛する私は木を搾取してはいけないの」  俯いていると、パイン材のテーブルが目に入った。ところどころにできた茶色い染みみたいな模様が踊っている。そこを手でなぞって、木に触れたい。私は沸き上がる欲求を必死に飲み込んだ。  「葉ちゃん、実はね。僕はあれから森林学を学んでドイツの森林官という職に就いたんだよ」  突然、妖精さんが言う。  「え? シンリンカン?」  「そう。ドイツには国有林を管理し、守る『森林官』って言う職業があってね。森の生態系の調査や、安全の確保なんかが仕事なんだ」  「なにそれ。格好良い」  「ふふ。そう?  今はもう退職してしまったけれど、その後で地元に戻ってきて今は隣の森の森林アドバイザーとして生活をしている。ほら、昨日も僕が森の中でツアーをしているところを見たでしょう?」  「うん。あれはどんなツアーだったの?」  「主に観光客や森林学を学ぶ学生さんを相手にね、森林の不思議を語って回っているんだ。森林官の仕事を通して学んだことや、気づいたことなんかを含めてね。多くの人に森の神秘を伝えたくて。  もちろん、毎日森林の様子を見て回ることもしているよ」  「森林の神秘か。  それ、私も聞きたいな」  妖精さんは、口をぽかりと開けて私の顔を見ていた。  「あ、妖精さんはお仕事でツアーをしているんだものね。タダでお話を聞くわけにはいかないよね。もちろん、きちんとお支払いするから、ダメ……かな?」  妖精さんは笑った。  「いや、ごめん。葉ちゃんがそんなことを言うとは思わなかったから驚いてしまって。  だって、葉ちゃんの方が僕より森林のことをよく知っていると思うから」  「そんなことはないよ。日本では森から遠ざかって生活していたから、何もわからないの。  だから私にも教えて欲しい」  「もちろん構わないよ。お代もいらない。  でも、そうだな。代わりと言っては何だけれど、僕の仕事を手伝ってくれないかい?」  「え、お手伝い? 私にできるかな」  「大丈夫、難しいことはないよ。とりあえず、最初は僕に付いて回ってくれるだけで構わないさ」  「それくらいなら……。  よろしくお願いします」  「こちらこそ、よろしくね。  ほらほら、頭を上げて。ここではドイツ式に、握手といこう」  握った妖精さんの手は、とても温かかった。  「そうだ。仕事を手伝ってもらう前に、ちょっと葉ちゃんに見せたいものがあるんだ。  次に就寝する16時まではまだ少し時間がある。今から森に行かない?」  「うん、わかった」  勢い良く立ち上がろうとすると、テーブルの下に膝をぶつけた。痛みでうずくまる私。  「葉ちゃん、大丈夫?」  妖精さんが近づいてきた。  「うん……大丈夫。  ……って。本当に心配してくれたの? 顔がニヤついてるよ」  「ごめん。そんなに勢い良く立ち上がると思わなくて、つい。  葉ちゃんは本当に森が好きなんだね」  急いで準備するから、と言って妖精さんはテーブルの上のカップ類を片づけていた。森へ行くことが嬉しくて、はしゃいでいる子供みたいに見られたことが恥ずかしい。私はソファに痛めた膝を抱えて座り、妖精さんを待つ。  「よし、出発しよう。森林浴だと思って、気楽にね」  「うん」  外に出ると、少しだけ傾いた太陽が瞳に飛び込んできた。森に入ってしまえば、すぐに暗くなってしまうのだけれど。  「そういえば、『シンリンヨク』って世界にも通じる言葉なんだよ。日本で作られて、日本が世界に広めた言葉なんだ」  妖精さんが嬉しそうに語る。その笑顔を見ていると、こちらまで嬉しくてなんだか誇らしい気分になった。  「へぇ、そうなんだ。なんだか嬉しいね。  でもドイツの方がよっぽど森林浴を楽しむ人が多いように見えるよ。日本で森林浴をする人たちはあまり見かけない」  「ドイツは平坦な土地にも森があるからね。町から人が来やすい。それに、森の中に太い基幹道路も整備されているから歩きやすいんだ。  日本の森はほとんどが山と一体化しているだろう? そうなると元々山に住んでいる人たちしか森に寄りつけなくなる。それに、森林浴をしようとすると登山になってしまうって聞いたことがあるよ」  「確かに、そうかもしれない。  日本では森に入るのに、ベビーカーを押しながら来る人はまずいないよね。森林浴をするにも滑りにくい靴や、汚れても構わないようなウェアを着込んで行くのが鉄則かもしれない」  「ドイツと比較しても日本の森林面積は多くて羨ましいかぎりなのに。一般の人が森の恩恵を受け辛いことは嘆かわしいことだね。  もっと気軽に森に遊びに行けるような整備が整うと良いね」  それは本当にそう思うけれど、街が自然から遠ざかっているおかげで私は森から離れて学生生活を送ることができたことも確かだった。  黙って妖精さんの後をついて歩くと、妖精さんも静かになって森の中を進んだ。ザクザクと枯れ葉や落ちた小枝を踏みつける音だけが森に響く。  妖精さんは、歩くのがとても早かった。森の中に慣れていることもあるかもしれないけれど、彼の歩く背中を見ているとそれだけが理由ではないように思えてくる。私の3倍の早さで進む体内時計を持っている妖精さんだから、心臓の鼓動や息づかいだって早いのかもしれない。だとすれば、歩くスピードが早くなってしまうのも頷ける。それでも、どうかもう少しだけゆっくりと進んで欲しい。生き急いでいるような背中は見ているだけで辛かった。  「葉ちゃん、もう少しだよ。  きっともうすぐ見えてくる」  私の心配をよそに、振り向いた妖精さんは笑顔で息も上がっていない。  逆にハーハーと息を切らしているのは私の方だ。妖精さんのスピードについて行くだけで脈拍数が上がる。運動不足がバレないように、できるだけ息を殺して妖精さんに笑顔を返した。  「ほら、着いたよ。ここに来て見てごらん」  先に行く妖精さんが立ち止まり、後からやっと追いついた私に立ち位置を誘導してくれる。  一度息を整え、目を瞑る。それから見上げると、そこには見事に咲き誇るヤマザクラの木が立っていた。  「わぁ、綺麗」  それ以外の言葉が見つからない。日本から離れたこの土地で桜が見られるなんて思わなかったから、余計に感動してしまう。  「ほら、あっちにもこっちにも桜が咲いているよ。この景色を葉ちゃんに見せたかったんだ」  妖精さんの指差す方向には、何本か見事な見頃を迎えているヤマザクラの木があった。ここに至るまでの道のりに桜は一本も咲いていなかったので、この一帯に集中してヤマザクラの木が集まっているのかもしれない。桜以外の常緑樹がほのかな桃色を引き立たせ、桜をより一層愛らしく演出しているようだ。  それに、森の中に咲く桜は可愛らしさだけではなく力強さも併せ持っているように見える。自然の中で生きる強い生命力がみなぎっていた。  「葉ちゃんは、毎年『オハナミ』というやつを日本でするのかい?」  妖精さんが私の隣に立ち、ヤマザクラを見上げながら言った。  「うん、毎年必ずするよ。桜並木の下をを一人で歩くのが好きなの」  「それは、桜が綺麗だから見に行くの?」  「もちろんだよ」  私は目を見開いて答えた。  それから、目の前に咲き誇るヤマザクラをもう一度目に入れる。都会でも、森の中でも、桜は変わらず美しい。  「細かい枝一本一本の先までいっぱいに花を咲かせる桜が美しいから、見たいんだよ。それ以外に見に行く理由なんて無いよ」  「そうだよね。その通りだと僕も思うよ。  毎年健気に花を咲かせる桜は美しい。  でもさ、他の桜以外の木は毎年必ず花を咲かせるわけじゃない。葉ちゃんだって知っているだろう。  それなのに、どうして桜は毎年必ず春に花を咲かせるのだろうね」  妖精さんの声はとても優しかった。私に問いかけるわけでもなく、独り言のようでもない。まるで目の前のヤマザクラに問うているかのような声。  どうして桜は毎年花を咲かせるのか。そんなこと、考えたこともなかった。  桜は毎年咲くもの。それが春の訪れを私たちに伝えてくれる。そういうものだとずっと思っていた。  でも、言われてみれば妖精さんの言う通りだ。毎年決まった時期に花を咲かせる木なんて、私は桜以外に知らない。  「もしかして、頑張り屋さんなのかな、桜は。  花を咲かせるということは、その後に実を付けるということでしょう? だから、桜は毎年子孫繁栄のために頑張っている。他の木が休んでいる年だって律儀に花を咲かせて、実を実らせて。次の世代を育てているの」  寒い冬を越えた後に、蓄えていたエネルギーを使って花を身体中に咲かせる桜を想った。  きっと、花を咲かせるということは木にとっても簡単なことではないはず。ましてや、葉を落として光合成ができなくなった後で開花させるなんて、身を削るような労力を必要とするのだろう。  桜は頑張り屋さん。だけど、どうしてそんなに頑張るのだろうか。桜の芽は育ちにくい特徴でもあるのかな。その辺りがわからない。  「そうか、頑張り屋さんか。もしかしたら、葉ちゃんの言う通りかもしれないね」  妖精さんは、空から舞い落ちてきた桜の花びらを一枚、上手に手のひらにおさめて愛しそうに眺めた。  「僕はね、毎年ヤマザクラの開花を眺めながら、どうして桜は毎年花を咲かせるのかって考えていたんだ。  森の中にある、大抵の他の樹木たちは毎年毎年花を咲かせたりしない。それは、生き残るための彼らの戦術でもあるからね」  「戦術?」  「そう。彼らは知恵を絞って、互いに協力し合いながら開花の年を見極めるんだ。  というのも、樹木は実をつけるために花を咲かせる。そしてその実はいつしか地面に落ち、芽吹くのを待つだろう。けれどもね、樹木の実というのは豊富に栄養を蓄えているから、それはそれは美味しいのだよ。だから森の中の動物たちは樹木の実が大好物だ。樹木が沢山実を落としたところで、イノシシやシカやリスに食べられてしまえば子孫の繁栄は望めない。せっかくエネルギーをふんだんに使って実を実らせたというのに、その労力が水の泡になってしまう。  だから樹木たちは考えたんだ。どうしたら動物に食べられずに子供たちを無事に育てられるかって」  「どうするの?」  「その答えはね、毎年花を咲かせないことにあるんだよ。  まず、森の中の動物は、食料が無くなる冬を越すために秋にどんぐりなどの実をたくさん食べて脂肪を蓄る。だから動物たちは懸命に樹木の実を探して食べようとするよね。その動物たちの数が多ければ多いほど、樹木の実は食べ尽くされてしまう。  そこで、樹木たちは互いに協力をして実を落とす年と、落とさない年を合わせることにしたんだ。  実を落とすのは数年に一度だけ。実を落とさない年の秋は、森に落ちている実が限りなく少なくなる。そうすると、食料不足に陥った動物たちは厳しい冬を越えることができなくなってしまう。どんどんと絶命してしまうんだね。  そして、森の中の動物たちの数が少なくなったところで森の樹木たちは一斉に花を咲かせて実を付ける。そうすれば、動物に食べられてしまうリスクが少しでも軽減されるから。自分たちの子供が芽吹く可能性をぐんと上げることができる」  「木って賢いんだ……」  「そうだね。木にも学習能力や考える力があるのかもしれない。  偉大だよね」  森の中に風が吹いて、天井の枝葉がザワザワと揺れた。桜の枝は、満開の花が重たそうにゆったりと揺れている。桜の花びらがまた少しだけ舞った。  「だからね、余計に考えてしまうんだ。  どうして桜は毎年花を咲かせるのだろうって」  桜は揺れる。まるで私たちの話し声を聞いているかのように、笑うように、楽しそうに揺れている。  「どうしてだろう。  毎年花を咲かせて、実を実らせて。何かそちらの方が良いメリットがあるのかな」  「それがね、桜は花を咲かせてもその後に実を付けない樹木もあることがわかっているんだよ」  「え! それじゃあ、子孫は残せない……。せっかく辛い冬を越えて花を咲かせたのに」  「そうなんだ。  葉が落ちて、光合成ができない樹木の身体ではエネルギーを作ることができない。冬を迎える前に蓄えて、残り少なくなったエネルギーを使って、桜は懸命に花を咲かせているのに、その後に実を付けないこともある」  「どうして、どうしてそんなことをするの。ただ新しい葉をつけることだけにエネルギーを使ったって良いはずなのに」  「どうしてだろうね。  どうしてだかわからないけれど、やっぱり毎年花を咲かせてくれる桜を見ると、『美しい』って言葉をかけずにはいられなくなる。  それで気が付いたんだ。  もしかしたらって。すごく人間勝手な考えかもしれないけれど」  妖精さんの目を見た。木漏れ日が反射して、樹液みたいな瞳の中にうっすらと満開の桜が写る。  「桜は、樹木は、僕たち人間の声を聞いているんじゃないかって僕は考えたんだ。  花を咲かせる度に、『綺麗だね』、『美しいね』って自分を賞賛する声を桜は聞いている。  ほら、よく植物に話しかけると早く綺麗な花を咲かせるって話を聞くでしょう? それと同じことが桜の木にも起こっているのかなって思うんだ。  自分の花を見て、喜んでくれる人がいる。決して傷つけることなく自分の花をただ賞賛し、毎年楽しみにしてくれている人たちがいる。そのことが、桜が花を咲かせるエネルギーになっているのかもしれないって」  「つまり、桜は人間のために毎年花を咲かせているってこと?」  妖精さんはようやく私の方を振り向いて、それから、ウシシと笑った。  「そうかもしれないって話さ。森林官らしくない、僕の妄想」  それだけ言うと、妖精さんはまた見事に咲き誇るヤマザクラに見惚れた。  空高く伸ばしたはずの枝を下向きに変え、手が届きそうな高さで花を咲かせるヤマザクラ。妖精さんの目の前には、まるで開いた手のひらを差し出すようにヤマザクラの枝が一本伸びている。  このヤマザクラは、妖精さんのために花を咲かせたのかもしれない。妖精さんに見て欲しくて、綺麗だねって言って欲しくて、身体いっぱいに花を着飾って妖精さんが来るのを待っていたのかもしれない。妖精さんの話を聞いて、そんなことを想像した。  だって、妖精さんに見つめられてこのヤマザクラはすごく喜んでいるように見える。そよ風に枝を揺らす度、キラキラと音が鳴りそうなくらいに一つ一つの桜が煌めく。花の中央が濃いピンク色に染まり、まるで恋をした乙女の頬のようだ。  人間と樹木との関係は、私が思っているよりも悲観的なものではないのかもしれない。  このヤマザクラのように、人間が好きで、人間を喜ばせたいと思っている木もあるのかもしれない。  そうだと良いな。だって桜が人間のことを好きなのだとしたら、それは人間の好意が桜に届いているという証だから。人間も、樹木のために何かができるという希望だと思うから。  「そろそろ、時間だ」  左腕に付けた腕時計を見て、妖精さんが悲しそうに微笑む。その後ろで、ヤマザクラも切なそうに枝を揺らしていた。  妖精さんは私の三倍の早さで一日が過ぎていくけれど、木はどうなのだろう。  五百年だって生きていける木もあるくらいなのだから、きっと木の中に体内時計があるとしたらその針はすごくゆったりと進んでいるはずだ。もしかしたら、私たち人間の五分の一の速度で一日を過ごしているのかもしれない。木にとっては、五日分の120時間が一日になるという計算か。太陽が五回上って沈んだ時、ようやく木は一日の活動を終えて眠りにつく。  妖精さんからしてみたら、きっと木はもっともっとゆったりと生きているように感じることだろう。悠久というか、むしろ永遠にも近い生命体なのかもしれない。  妖精さんが木のことをどう見ているのか、どう思っているのか。これから一緒に過ごす中で知っていきたいと、素早く歩く妖精さんの後ろ姿を見ながらぼんやりと思った。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません