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 花森は僕の机の落書きを食い入るように見つめた。そうして無言のまま周囲に視線を走らせた。はがねの幕でも降りたかのような静寂の中、誰かの鼻を啜る音しか聞こえない。  ふん、と一人が鼻で笑った。田口がにやけ顔を花森に向けている。 「両者とも手は出せない」という弛緩した空気が、ざわめきの余韻みたいに室内には残っている。 「誰だっけ、城島くん? からの伝言。らしいよ。『決着をつけるんだー』とかわめきながら書いてた」    それでなぜ「八百長」と書くのか。なぜ僕の席に書くのか。  ずいぶん遠くから石を投げつけたがるものだと思った。嘘だと分かる前提で嘘をつく、これもまたプロレスなのだろうか。  だが真剣さを欠いた暗黙の了解など、最初から最後まで悪ふざけでしかない。  花森は口を閉ざしたまま田口の元に迫った。大股な足取りが饒舌じょうぜつすぎるほど彼の思惑を伝えてきた。

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