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 彼が何かと「見せ場」を設けられたのも、居心地の悪さの表れだと思う。  体力テストでは彼にわざわざ挑戦する者が現れる。バスケットボールでは頻繁に、あるいは過剰にパスをもらう。  まるで周囲が彼を主人公に仕立て上げようとしているように見えたし、彼は彼でその役割をうまくこなしていた。  うまく、というのは必ずしも勝利や達成を意味しない。それだってプロレスを思わせる。  花森には最初から「プロレス」という前提、言わば幕のようなものがあって、彼の言動は常に演劇じみた期待を誘った。    握力で彼を上回った男は派手に賞賛され、求められてもいないのにポーズを決めて勝ち誇った。花森は勝者の手を上げて称えた。喝采を送る「観客」も含め、どこまでが作り物なのか僕にはわからなかった。たぶん誰にもわかってはいなかった。  寂しくはないのだろうか、と思った。

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