空色プロレス
4-⑥
プロレスはありもしない「ふさわしさ」を演出するし、しなければいけない。その意味で、花森と城島は個性以前の段階で評価される。 声が大きくて面倒な連中――とりわけその中でも真ん中にいることが多い茶髪の田口は、花森のいないところで僕をよくからかった。 たぶん彼らが手を出してこないのは花森のおかげだが、使い走りにされたり筆箱を窓の外へ投げられたりするのは花森のせいだった。 そんな時は仁川さんがよく文句を言ってくれた。治田が花森の巻き添えになってから、彼女がプロレス被害の窓口みたいになっていた。 「うるせえよ。フマキラー撒くぞ」 仁川さんの太めの眉を、彼らはよく「ムカデ」と揶揄していた。彼女は無視していたが、代わりに治田がよく突っかかっていた。
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