秋の国から遥か遠く、海を渡った神の実は、 古く伝わる言葉に違わず、王と王女の目を覚ます。 しかしそのあと不思議なことに、癒しと救いの力といえば、 あたかも儚い夢の如く、二度とあらわることはなし。 奇跡の果実が放っていた、眩い黄金の光は途絶え、 輝き失せたその色は、たちまち紅葉と同じに変わる。 力を無くした実の種子は、土に還され芽を出すと、 やがて小さな樹に育ち、真っ赤な果実を成したという。 城に育った神の樹は、天に煌めく星々が、 紅葉の季節を招くたび、 繰り返し、また繰り返し、 秋、訪れりと告げ続けた。 その実を見上げ、人が伝える物語。 瑠璃の瞳の彼の姫と、黒鳶の目をした従者の話。
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