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「きみ高校生?」 「そう、ですけど」 「それならこれ、受け取れない」  差し出された手の上に百円玉があった。 「きみのお小遣いでしょう」 「えっ」 「いつも聴いてくれて応援してくれてありがとう。でもいつか言おうと思ってたんだ」 「で、でも」 「働いて自分で稼ぐようになったら、ね。それまでは聴いてくれるだけでいい」  アルバイトの収入から捻出してるかもしれないじゃないかと反論しようとした。でもバイトなんてしていない。  彼女の言うとおり、僕は親の脛かじりの普通の学生だ。  学校の帰りとか塾の行き帰りとか、土曜日でも日曜日でも、いつもいるわけじゃないけれど、もしも彼女がいたら、その歌を聴くのが僕の密かな楽しみだった。  上手くはないかもしれない。しかしちょっと掠れたようなその声は情感があって好きだった。

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