「俺、ファンなんです」
「ありがとう」
「だからその100円は、その、気持ちというか、とにかく受け取って欲しいんです」
「うん。そっか」
「はい」
少し首を傾げ、その人は腕を組んだ。
白いシャツの胸元に汗が光っている。
「そうね。じゃあこれで何かも冷たいものを買ってきくれない?」
手を出してと言われ、僕の手のひらに数枚のコインが。
「あっちに自販機があるからさ。二つ買ってきてね」
「ふたつ?」
「そうだよ。わたしときみの」
また風が吹いた。流れ落ちる汗が目に入って、思わず見上げたら、ビルの向こうに眩しい青空が光っていた。