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*部屋いっぱいに陽の光が入るように大きな窓のついた、森の中にぽつんとある白い家* *これは、そこに住む君がしてくれた、ある日の会話* ぼく、あれからいつも、作業机の窓際に一凛だけ花を生けてるんだけど、 作品とか、ネットの書き込みとかで、 「その瞬間綺麗でも、  いつかは枯れるんだから、花で飾っても意味が無い」みたいな 言葉を見かけることも多くて。 それは、比喩表現でも、物理的な話でも、両方見かけるし、 勿論、ぼくひとりへ向けられた言葉じゃないんだけど、 ぼく、花で飾ることに意味が無いとは思えないんだよ。 まぁ、そりゃそうだよね。意味ないと思ってたらこんなに続けてないもん。 *君は、優しく笑って言った* 確かに花っていつかは枯れちゃうし、切り花は特に寿命が短いよ。 鉢植えだって、失敗したらすぐ枯れちゃう。 だから、ずっと残せるようにドライフラワーとかハーバリウムがあるんだろうけど、 ぼく、ドライフラワーは少し怖いんだ。 何ていうか、永遠が、怖い。 永遠を目の前にしてると、 自分はいつか死ぬって言う恐怖と、 これから先の長い時間に何かあるんだろうっていう不安が、こみ上げてくる。 終わりへの恐怖と、続く不安。 矛盾してるよね。 *君は、悲しく笑って言った* 光を背に、生けた花を見てると、 荒んだ人間の部屋に、申し訳程度の花を飾ったって何の意味もないだろって思うよ。 綺麗な花と自分の違いに狂いそうになるし、 日々弱ってく姿を見てると、泣きそうになる。 それこそハーバリウムにでもしておけば咲いた状態は保てるのに、それはしたくなくて。 何やってるんだろうって、馬鹿らしくなる。 だからかな、花を見てると、すぐ溜め息が出るんだ。 決まった周期なんてなくて、前の花が枯れたら花屋さんに行って、 次の花を買って、 また一凛だけ生けて。 枯れた花を土に埋めて、新しい花に水を注いで。 漠然と、明瞭と、それを繰り返してるんだよ。 ただ綺麗で、 反吐が出そうなこんな社会とは別の世界に居るみたいに咲いてて、 凛としてて、 逃げることも、言葉を発することもなく、 咲いて、枯れていく。 そういう姿を見てると、 泣きそうになって、発狂しそうになって、時々へし折りたいと思うことさえあるよ。 花が憎いって言うより、 自分の無能さとか、滑稽さに耐えられなくて。 ごみみたいな、人間のなりそこないみたいなやつが、 何馬鹿なことやってるんだって、 無駄だって、無意味だって、 そう思う。 それでも、次の日にはまた水を変えて、 枯れたら土に埋めて、花屋に向かってるんだから。 不思議って言うか、 ほんと、馬鹿みたいだよね。 君のせいで、やめようにもやめられなくなっちゃったよ。 *君は、優しく、悲しく、笑って言った* …毎日毎日、君のいない世界で花を生けて、 音を紡いで、生きてるよ。 君の遺してくれたものがぼくを生かして、 花は、今日も咲いてるよ。 心無い言葉は絶えないし、 花なんて、今のこの世界からしたら無駄なものかもしれない。 でも、ぼくはその一瞬、花が咲いて、 その空間とか、ひとの心を華やかにしたり、綺麗に飾ったりしたなら、 それで、いいと思うんだ。 確実な意味が、無かったとしても。 綺麗に咲いて、そこに居てくれたことは、変わらないから。 その存在が生むものが、狂気だとしても、号哭だとしても、無駄だとしても、 無意味じゃ、無いと思うんだ。 そう、思いたいんだ。 それでもやっぱり、毎日のように苦しいよ。 こころが疲れる日はあるし、 花を花瓶ごと床にたたきつけようかと思う日もある。 花を見ながら、溜め息をついて、 泣きながら、また音を紡いで、 こころが削れていくだけなのに、 そんなの疾うに分かってるのに、また花を買って、生けて。 馬鹿みたいに、狂ったように。 何でだろうね。 理由の見当は、何となくつくけどさ。 ...やっぱり忘れられないんだよ。 忘れたくないんだよ。 手放したく、ないんだ。未練たらたらだね(笑) 君に怒られちゃうかな。 *君は、一筋涙を流した* ぼくも、花も、結局は枯れるよ。 君みたいに。 いつか、枯れる。 咲いてる意味なんてあるのかって、そもそも咲けるのかって毎日のように思って、 こころから笑うこともできず、目一杯咲くこともできずに終わりを迎えて、 笑って死ぬことも、できないかもしれない。 それでも、生きた花にしか出せない魅力ってあるから。 死を約束されながら咲く姿は、美しいから。 また、花を生けるんだよ。 *君は、泣きじゃくりながら私に話した* *少し笑顔が混ざったようにも見える顔は、とても苦しそうだった* *大丈夫だよ、いつも見てるよ、大好きだよ。* *そう、力一杯叫んだ* *それでも君は、ただ淋しそうに花を見つめていた* *分かっている、私の言葉は届くはずがない* *それでも、君に言葉をおくるよ* *この花にのせて*

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