私にはなにができる 私にはなにがある 見失って、眩んだ方向 震える膝に手をやっても連動する手指 あなたを追いかけてもいいのだろうか 絡みつく疑問は私が生み出した蛇 「ここで待ってるだけでいいから」 温もりに身を預けて散漫に返事をした 散っていくはずの言葉が深く刺さり抜けないまま腐敗していく 「これ以上私から奪わないで」 これ以上空白が増えないよう それでも流し込める材料を見つけられるのはこの先だけ 思いきり叫んだ、雨に紛れてかくれんぼ 目的も意味もない、こんなこと 単に喉が潰れるか 一足しかないスニーカーがずぶ濡れになるかくらいで 都度、数分を無駄にする その間にも進む止まった時間にハンデはない 騙し騙して再カウントして進んでないって強情張っても 聞き分けないのは私だけ 無情 “私のきおくはどうなるの” あなたはどうしているのだろうか 私はまだ待っている きおくに記憶を重ねるたびにそのきおくが中和されていく 境界が揺らぐ 境目もろとも溶け出していく 「その時は追いかけてきて」 一縷のリンゴが実る 蛇の胴体が陽炎に炙られる お い か け て あの蛇は助かるの? それとも助けたほうがいいのだろうか 右も左も上も下も どっちがどれが、私の― ヒビが入っていたなんて 絶え間なく浸透するように溢れていくのに 補強を繰り返してもその時を早めただけだった 作り物、偽り物 もともとがどうだったっけ 蛇が這う 蛇がリンゴを飲み込んだ 「もう終わりにしよう」 蛇が喉を詰まらせた “なんでこんなことに” 蝦蟇と同じ声で鳴く 全く同化してしまいそうなほどに 死んだ蛇の後に大きな轍 「せめてこのきおくだけは…」 腐敗したところから私を侵食する 体は赤く畝る 境界が破綻した 黄色い目には映らない 震える体に目を向けて 熟してもっと 境目を吸収していく 「ここでずっと待っていてね」 中和されて中和されて きおくは記憶を新規に作成と更新 私はどこ 私はなに お わ ら せ な い ―――――――――――― 唾液を誘う赤い果実 あの木の果実を取りに行くだけ 轍から派生した跡 待ってるだけは退屈だから
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