五十音のへんな生き物図鑑
『う』ウカリオル族のガオ

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 カブー島のウカリオル族は神秘的な技術を多数持っているが、その中の一つにガオという物が有る。  ガオとは、我々の言葉に置き換えると記録や記憶のような物だ。それを形にした物なので、『本』や『メモリーチップ』のような物だと思ってくれれば良いだろう。    ウカリオル族は紙やマイクロチップを使わず、『生きた鳥』にある方法で情報を記録し、必要に応じて読み込んだり取り出したりするという方法を持っている。  以下はその手法をまとめたテキストである。 材料 ・卵 ・銀の夜に咲いたテイトの花(ウカリオル族には闇夜を色覚化できる能力が備わっている。銀はウカリオルにとって神聖な色であり、何か重要な事は必ず銀の夜に行われる) ・アパックネス(サボテン) ・天の色を司る8種の動物の体液(白馬、オランウータン、孔雀、パンダ、蛙、カラス、カタツムリ、陸亀) ・アルコール ・子宮 ・子供の脳 ・親類の血管(保存液に漬けた物を各世帯毎に保管してある) ・注射針 ・タール ・キブの実(ウカリオル族の主食となる果実。柿とりんごの中間のような味) ・ハンドゥ湖の赤い砂 ・コランの木の欠片(コランとはウカリオル族の民が葬られる天然の木炭が大量に自生している地域。墓場のような物) A.ガオを作る 1.テイトの花、アパックネス、コランの木、キブの実を赤い砂と混ぜて擦り砕く。これをウカリオル語でグレア(ゆりかご)と呼ぶ。 2.グレアを火にかける。アパックネスの豊富な水分が無くなるまで煮詰める。水分が無くなり、粘土状になったグレアで卵を包み、羽化させる。 3.羽化させた鳥にキブの実、8種の体液、アルコールで殺菌した子宮と脳を食べさせて育てる。 B.ガオとの絆を作る 1.親類の血管をタールでコーティングし、チューブのような物を作る。その両端に注射針を取り付ける。これをガオとの絆と呼ぶ。親類の血管を使用するのは、ガオを使った者の血管で無ければ情報の伝達が上手くいかないからだそうだ。また、肉親の一部を使用するというある種まじない的な意味も有るのかもしれない。 C.ガオとの親和性を高める 1.グレアを食べ、8種の体液を飲み、銀の夜に瞑想をする。最初は酷い下痢と吐気に襲われるが、続ける内に症状は治まってくる。身体に幾何学のアザが浮かび上がり、グレアの性質に馴染んでくると、ガオとの交信が可能となる。 D.記憶のセーブ、ロード ガオとの絆を使い、互いの血を交わらせる。そして、ガオに伝えたい記憶を何度も思い浮かべる。その思いが強ければ強いほど引き出した時のイメージは鮮明になる。逆に、曖昧だったりそれほど思い入れの無い記憶だと、引き出したとしても記憶違いが生じたり、他の人だった場合は上手く伝わらず誤解を招いたりする。  以上がガオの方法である。  ウカリオルの民は書類や電子機器を使わずともこの方法で学び、懐かしみ、想いを伝えている。もちろん、倫理観と衛生観念や材料の調達という面からも我々がこの方法を使って記憶を保存する事はできないだろう。  しかし、ガオという伝書鳩が親子や恋人の間に、言葉では伝えきれない血の通った記憶の手紙を運ぶのかと思うと、少し胸が熱くなった。  手紙よりEメールよりビデオレターよりも、本当の想いが伝わるのではないだろうか。 筆者・ボンゴボンゴ=バンゴボンゴ  

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