100回継ぐこと
[027:ジムイン]

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 前略 ひとときの休息の中に沈んでいるであろう勇者くんへ  ひとまず、長かった試験勉強お疲れさま!本当によく頑張りました。  結果がわかるまではいろんなことが頭の中で渦巻いて、多分何も手につかないと思います。実際私も去年の今頃はそんな感じでした。  本番の日、戦いを終えた君と会えて本当に良かった。会えなかった間の自分の感情まではっきり自覚させられたもの。  私、自分が思っていた以上に不安で寂しかったみたい。隣に本物の君がいることに、少し感動すら感じていました。  そんな風に見えなかったって?それはもう、怒涛の一年を経て大きく成長した私の実力によるところね、ふふん!  それは冗談として、この手紙ではその時にちゃんと伝えられなかったことを書きますね。  君が試験前にくれた最後の手紙は、私がこの一年で忙しさにかまけて、初心を忘れかけていたことを思い出させてくれたの。  多分、前の手紙を書いている君の眼には、これまで私が見たことのなかった輝きが宿っていたと思う。  どんな外野の声だって跳ね除けるほどの力強さ。宇宙にまで真っ直ぐ届きそうな熱い思いが、進むべき場所へと君を自ずと導いてくれそうで、勝手だけど安心すら感じていました。  で、ここからは、会ってから思ったこと。  本番で出た数学の問題のこと、色々話してくれたわよね。  同じサークルで機械知能・航空工学科(略すなら「キチコー」かしら?)の子に、理系の数学のことちょっと聞いてみたんだけど、君が言っていた通り最初の10分で解くべき問題を見極めることが大事なのね。残酷だけど、そこでうまく波に乗れるかどうかが明暗を分けるっていうことも聞きました。  試験結果が不安なのは痛いほどわかります。  でも、それにしても、そこでつまづいたことばーーっかり話してなかった??なんだか会って話したというより、失敗したことをポロポロと聞かされただけ、って感じちゃいました。私の変化にも気づいてくれなかったし…  試験が終わるのが本当に楽しみだった分、ちょっとがっかりしちゃいました。 けどそれで終わらないのが金澤奈海。今日は落ち込んでいるであろう勇者くんに喝を入れるわ。  しゃんとしなさい!巽壮太!!

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