100回継ぐこと
[067:中村優一]
巽壮太さまへ 返事がまだ来てないのに、こちらからまた手紙を書いてしまってます。 早いもので、今年ももう終わりだね。 君はクリスマスをどう過ごしてた? 漫画の執筆作業に没頭していて味わえなかった感じかな?食事や睡眠はきちんと摂ってね。 私は……こんな事、君に言いたくないけど、 この季節のせいか、とても寂しい。孤独を感じてます。 実は生徒に、『脚本が深みがなくて、人物の背景がわからない』と言われたの。 私は他人に興味がないのかな? 自分のことしか考えていないのかなと思うと嫌な人間だなって。 だって脚本家って物語を作り、そこに生きる人物達を描くのが仕事でしょ?そんな基本的な事が出来ていないのかと思うと悲しくて。 それでね、生徒にどんな脚本が良いの?って聞いたら、『心を奪われて時間を忘れて読めるもの』って。 勿論、私もそういう脚本を書きたいと思って頑張ってきたよ。 でも、 でも、、 頑張れば頑張るほど空回りしてる気がして、 頑張るってなんだろうね。 どんなものを書いたら良いのかわからなくなってしまったよ。なんでだろうね。 君にはこんなに自分の感情出せるのに。 手紙は無我夢中で書けるのに。 私、脚本を書くのに向いてないのかな? 巽くん、 私、 大丈夫じゃない。 平成三十年 十二月二十六日 金澤奈海
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