100回継ぐこと
[010:卯月草]

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 巽くんへ  以前手紙に書いた演劇の台本のことだけれど、また1から書き直してる。  お盆の間、久しぶりに、といってもまだ半年も経っていなかったけど、高校までの通学路を歩いてみたの。  生徒の姿はなくて、お盆だから部活も休みなんだ、なんて考えながら、制服じゃない服を着てこの道を歩いてることに、なんだかそわそわしちゃった。  もちろん君のことも考えてたよ。  ああ、ここを一緒に歩いていたのにって、時間ってあっという間に過去になっちゃうんだね。  門の前まで行って、ロッカーまで続く道の、桜の木が青々としているのを見ていたら、ふとある場面が浮かんだの。これを書きたいって思って、すぐ家に戻ってノートを開いたんだ。  君のことを考えていて思いついたから、これは君のおかげね。  あ、今ニヤニヤしてるでしょ? 直接見なくても、君の表情なんてすぐ想像できちゃうよ。  そうだ、私、髪を染めようと思ってるんだ。前にブロンドのウィッグ姿、綺麗だっていってくれたよね。けど、舞台からおりた私はあまり大胆にはなれないかな。  そもそも君は髪を染めることを嫌がりそうな気がする。何となくね。  けれど、一応聞いておこうかな? どんな色がいいと思う?

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