前略 巽壮太様 レターセット素敵です。でも、なによりアダムスキー型UFOの切手に感動しました。 さて、手紙もSNSも大差はないと君は言うけれど、わたしの意見はちょっと違う。古臭いって笑われても、やっぱり肉筆には温もり?みたいなものがあると思うんだ。 だからね、君の友達には悪いけれど、手書きの文字をフォントにするってプログラムには抵抗を覚えてしまう。君はわたしの字を綺麗だって褒めてくれるけれど、わたしは自分の字や言葉がそれこそ機械的に感じてしまうことがあって、そこがコンプレックスだったりするのです。むしろ、君の癖の強い文字、いつだって定まらなくて、ゆらゆらと波立っているような君の手書きの言葉に安心する。わたしたちの「島」を取り囲んでいた、あの海を思い出すから。 ところで、ずいぶん歳上の彼と付き合ってると(君が渋沢さんとの交際を反対する理由はそこなのかな?)、たったひとつしか歳が変わらないのにお姉さん風を吹かしていた昔が気恥ずかしくなるね。いまになってみれば、誕生日が数百日違ったところで、そんなのは、ささやかな季節の移ろい程度の誤差でしかないし、実際、君と付き合っていた頃は、わたしの方が君を頼っていた気がするよ。 いまだから言うね。どうしようもなく身勝手で幼かったわたしを受け止めてくれてありがとう。取り返しようのないことばかりだったし、たくさん君を傷つけてしまったけれど。 文通はもちろん歓迎です。君は不本意でしょうが、わたしは直接肌を触れ合わせた瞬間に劣らず、こうして手紙で言葉を交わす時にこそ君の存在を感じます。 そう、どうしてもすれ違ってしまいがちな手紙の時間にこそ本当の何かがある。どうしてこんな内省的なことを書き連ねているかというと、ずっと書きあぐねていた芝居の脚本にまた取り組みはじめたからなんだ。 とっくに投げ出したと思ってた? ご存じの通り、わたしはけっこう執念深いのです。
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