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 と言っても、先輩は聖夜だからといって騒ぐような人ではないかもしれませんが。正直なところ、今僕はいつもより豪華な晩ご飯(シチューと生クリームたっぷりのケーキ)を食べ、受験生らしからぬほど陽気な気分です。僕の部屋の窓から見えるお向かいさんの家は、いつにも増してイルミネーションに気合をいれていて、とても綺麗です。部屋からしか見られないのが残念なぐらい。浮かれているわけではないと書きましたが、もしかしたら一番浮かれているのは僕かもしれません。駄目ですね。この手紙を書き終わったら、きちんと勉強することにします。  そして、もうあと一ヵ月もしないうちにセンター試験が始まります。一月十五日、十六日です。早いものですね。大人は時間が過ぎるのが早いとよく言いますが、こんな感覚なんでしょうか。  一つ、いい報告があります。これには僕も思わずガッツポーズをしてしまいました。それぐらい嬉しかったんです。でも、本当にとても良いことなので、手紙の最後に書くことにしますね。少し意地悪な先輩の真似です。楽しみは最後に取っておくほうがいいでしょう?  でも、こんなことは僕も考えたくはないのですが、良いことには悪いことが付き纏います。それは僕たちが悪いのではなくて、自然の摂理のような、抗えない圧倒的な引力のようなものだと、僕は考えています。だから、それに押しつぶされてしまわないよう、努力をしていかなければならないのだと、そう思うのです。  なんだか理屈っぽくなってしまいました。要するに、僕は今まで以上に勉強をしなければならなくて、手紙が少し、ほんの少しだけ、遅れてしまうかもしれないということを言いたかったんです。でも、良い報告が書けるように頑張るので、どうか見守っていてください。 草々  追伸  塾の定期テストがA判定でした! 平成二十二年 十二月 二十四日  受験兵士 巽壮太

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