100回継ぐこと
[004:つこさん。]

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 お互い忙しくて会えない間、こうして手紙で連絡を取り合わないかってことです。いわゆる文通のお誘い。  それがどうしてわたしの努力につながるかって言うと、きみの手紙の文章を読んだから。  情感たっぷりに筆が趣くままに書いたのだろうけれど、重ね言葉を使っている箇所がいくつかあるよ。  以前から文章を書くのは嫌いだって言っていたよね。記述問題は毎回空欄で出すって。このままじゃ入試でも同じことをしちゃうかも。記述は配点高いから、もったいないよ。  今からなら受験までに読解力を鍛えることも、わかりやすい文章を書けるように訓練することもできる。  私が国語の先生になりたくて、今の大学を選んだことは知っているよね。  きみは今まで通り夜に手紙を書いてくれるといい。その中で直したほうがいいところを、私が修正して返すから。  私にとっても、わかりやすく教えることの練習になるから、とてもいい案だと思うんだ。  他にも、わからないことがあったら訊いてね。なにせ、私は受験戦争を無事に戦い抜けた戦士だからね!  たつみくんは数学が得意だったよね? 代わりにと言ってはなんだけど、ときどき私に教えてくれると嬉しいな。  恥ずかしい話なんだけれど、今でも高三のときの教科書で混乱するところがあるの。数学Ⅲとか、開きたくもない……。  私と同じ大学に通いたいって言ってくれたの、忘れてないよ。私にできることはさせて?  長々書いてしまったけれど、ここで筆を終えたいと思います。                                    かしこ  追伸  結びの「草々」は、私みたいに「前略」をつけたお手紙に使うのよ!       平成二十二年五月十四日                                  金澤 奈海

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