100回継ぐこと
[015:翔優]
少し感情的になってしまったみたい。すぐ感情が表に出てしまう気質は直らないものね。気を取り直して、私の近況を書いて終わりにします。 大学ではもうすぐ学園祭が始まるの。何だか学生も教授たちも心なしか、ザワザワしてような気がする。キャンパスでは模擬店の準備が進んでいて、あちこちにテントが張られているわ。 最近、大学の演劇サークルに入ったんたけど、初めての公演が学園祭で開かれるの。私は入ったばかりだから、役はもらえなくて、照明係の助手をやることになったんだけどね。 高校を卒業してからも演劇から離れられなくて、一人暮らしの家で台本を書いていることは前にも手紙に書いたよね。でも、入学したときは大学の演劇サークルには興味が持てなくて、繁華街の小劇場に足繫く通って、地元の劇団ばかりを鑑賞していたわ。 でも、演劇に触れるうちに胸に熱いものが込み上げてきて、「演じたい」って思うようになってきたの。そんな時に基礎ゼミの同級生から熱心に誘われて、サークルに入ることにしたんだ。 巽君には来年の学園祭で、役をもらって演技をしている私を観てほしい。いや、巽君も同じ舞台に立ってほしい。そんなことを書いていると、私が高3の頃の高校演劇地区大会を思い出すね。そして、帰り道に私たちが交わしたあの約束のことも。 近況が長くなっちゃったから、この辺でおしまいにするよ。そろそろ寒くなってくる頃だけど、体調管理には気をつけて勉強を続けてね。 草々 平成二十二年十一月九日 金澤 奈海』
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