100回継ぐこと
[071:羽田光夏]

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金沢奈海様 年が明けてから、丁度1週間になりますね。 明けましておめでとうございます。 元旦の日に届きそびれた2.3枚の年賀状に交じって、先輩からの手紙を見つけました。 年賀状、そういえば去年も1枚も出していなかったなあ。 毎年年賀状が発売されたといいうニュースを見聞きする度に、今年こそは学生時代にお世話になった恩師や、小学校の頃の友達に久しぶりに年賀状を出してみようかなあと思いつつも、忙しさにかまけて結局メールやSNSで済ませてしまう。 これではいけませんね。というわけで、この手紙を僕が久しぶりに書く年賀状ということにさせてください。 僕は仕事と週刊連載の疲れからか、今年のお正月は箱根駅伝も見ず、お餅も食べず、初詣にも行くこともなくほとんど寝て過ごしました。 カラーどころか、モノクロの夢さえも見ることなく。いわゆる寝正月というやつでしょうか。だらしないって笑われそうですね。 さて脚本の件ですが、僕から一つ提案したいことがあります。 物語のテーマに、僕たち自身のことを書いてみるのはどうでしょうか。 先輩の中から思い浮かんだ光景からこの案が浮かんだんです。なぜって、そのはだしの二人こそ、まさに僕らその物なんじゃないかって思ったからです。 出会った時のこと、二人で歩いた海のこと、『島』のこと、空白の時間のこと、あの時僕が抱いた絶望のこと、先輩の大切な人のこと(あまり聞きたくないかもしれないけど)、あの約束のこと、そして手紙のこと……。 それらのことは、今思い返すとあまりにも身勝手で、不器用で、でもどこかくすぐったくて、笑ってしまうほど恥ずかしいことかもしれない。 それでもそれら全てのことを、僕はこの物語に落とし込みたいんです。それこそが僕たちが書ける最高の物語なんじゃないかって思うんです。 すみません、ちょっと熱くなりすぎましたね。 クールダウンも兼ねて余談なのですが、大晦日に何となくつけていた紅白で、昨年の朝ドラ(耳の聞こえないヒロインが漫画家になる話だっけ)の主題歌を歌っているのを聞いて、受験生だった頃、ジョギング中に橋の上で出会った、♪ありがとうって伝えたくて♪ってよく歌っていたおじさんのことをふと思い出しました。 あのおじさんがやっている古書店は、今もまだあるのかなあ。もしまだあったら脚本の取材も兼ねて行ってみようかなあ。 返信待っています。 平成31年1月8日 佐藤巽

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