100回継ぐこと
[003:貴舟塔子]

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 以前から痩せすぎだと言われていたので、勉強がてら筋トレをして今よりも10kg増量します。受験勉強をしていると体力の重要性を沸々と感じました。確かに僕は痩せすぎです。次に先輩と会うときまでにもっとかっこよくなってみせます。『男子、三日会わざれば刮目して見よ』です。草々』 ***  手紙では素直になれると書いているくせに回りくどい彼の言い回しに私は少し意地悪な返事を書きたくなった。 『前略。たつみ君へ。一歳差とはいえ女子大生と高校生との差は覆らない。だからきみが私と同じ大学に入学するまでは下の名前では呼んであげない(本当はお互いに社会に出るまでは私の方が上だと思っているからね)。しっかりと勉強して最後の追い込みを頑張って! それと私に手紙を書くときにはセンチメンタルに浸るのではなく、ロマンチストになって欲しいな。まるで私と君との関係が過去形みたいじゃない。私はね、きみに手紙を書いていると少しだけ意地が悪くなってしまう。君からしたら先輩風吹かしているように見えるかな。  私も本当は寂しいよ。甘えたいよ。でもね、きみが私と同じ舞台に立つまでは見守ることに決めたの。大学受験が終わって春になったらお花見に行きましょう。こっちでは4月の中頃が見頃で、事務局前の中庭の桜並木にはそこかしこにカップルがいて、みんな人目を気にせず自然に振る舞っているんだ。浜の宮だったらすぐ噂が広まっちゃうよね。去年の夏にきみと行った白浜のビーチがとても昔のように思える。って、私も少しセンチメンタルになってるか。  10kgの増量には賛成。きみは少し痩せすぎ。肋骨がくっきりと浮き上がった体型はビーチには似合わないもの。男の子だったらもう少しガッチリしていた方が私も安心できる。見違えたきみと再会できることを楽しみにしているわ。  さて、きみにだけ努力を強いるのには気が引けるから私からも提案があるの。

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