100回継ぐこと
[075:作道 雄]

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すっかり大人になった佐藤巽くんへ  返事を書くのが遅くなってしまってごめんなさい。  三学期って、バタバタと始まってバタバタと終わるから、毎年忙しくって。生徒たちも受験でナーバスになるから、私も気持ちを持っていかれたり。  今は春休みになって少し落ち着きました。  演劇部のみんなは新元号を考えるのがブーム。連続ドラママニアの新部長は、「奈海」の「奈」が入りそうな予感!と煽ってきます。言われるとそんな気がしてくるから不思議。結果はいかに。  脚本のこと、忙しくてもずっと頭の中で考えてました。  ワクワクする日もあれば、ドヨーンと落ち込む日もある。  そんな日に思うのは、書き始めても、その脚本の結末は果たしてどうなるの?ってこと。脚本にも、私たちのやり取りにも、どんなことにも必ず、終わりはあるでしょう?  結末がわからないと、書き始められないよ。  巽くんとの過去は、たくさんある。楽しかったこと、悲しかったことだけじゃない。  ストップモーションみたいに目の前の時間が止まったような不思議な時間も、名前のつけられない幸せな気持ちも、思い出すだけで恥ずかしくなって枕に顔を突っ伏したくなることも。  たくさん思い出す。  君との時間や言葉は、心の別の引き出しに仕舞ってて、いつでも取り出せる。  それなのに、私にはまだ整理がついてない。  これまでのことがハッピーエンドに向かうのか、バッドエンドに向かうのか。わからない。  私は、結末が見えてからじゃないと書き出せたいタイプなのです。  いつだって早く安心したい。どれだけ大人になったって、大人になるまでに夢見た幸せな結末を望んでいたい。  そしてたぶん、こんなだから私は生きるのが苦手。 平成31年3月29日 金澤奈海 PS  渋沢さんにプロポーズされました。

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