100回継ぐこと
[042:白石優愛]

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巽壮太君へ 久しぶりのお返事となってしまいました。ごめんなさい。 急だけどさ、シェイクスピアって天才なんだね。 夏、ちゃんと夏らしいことできてる? 私は全くだよ。 同期の愚痴に付き合ってあげる優しい君に、私の話も聞いて欲しい。 7月にね、全校生徒の前で行われる部活動報告会があったの。部員三人が演劇同好会の紹介をしたら、他の生徒達がクスクス笑いだした。 最近、文化部の子達を誇張したモノマネがネットで流行ってるの知ってる? それに似てたんだって。 部員達もこんな空気になるとは思ってなくて、泣き出したり、辞めたいって言い出したり大変だった。なんとか説得できたけどね。 みんな本当に良い子たちなんだよ。馬鹿にされる笑われ方をしていいような子達じゃない。悔しかった。 でもね、文化祭での理科準備室の使用の許可が降りたの! 片付けが大変だけどね。 本当は、体育館やグラウンドに設置される舞台に立たせてあげたくて頑張ったんだけど、それはダメでした。 でも、演劇を見てもらえる場ができただけで嬉しいことだよね。君ならそう慰めてくれると思います。 夏休み中にした、運動部への贔屓がすごーい文化祭担当の先生とのバトル、君にも見て欲しかったよ!! そんなことが続いたおかげでプライベートはめちゃくちゃでした。秋まで時間がないもんね。頑張らなきゃ。 でもね、脚本を上手に書けない。部員みんなの為にも、最高の脚本が必要なのに、どうしても筆が進まない。海のように広い場所で迷ってる!伝わってるかもだけどかなり落ち込んでる!シェイクスピアになりたい! あの頃はさ、君とした約束に向かって、君の隣で心地よく書いてたな。君がくれる優しい言葉達は全て正解のように感じたよ。前にも書いたけど、頼りっぱなしだった。 だから、書けない理由は君がいないからだって気づいた。 素直に言うと、君に会いたい。 ずるいって言わないでください。 君となら、私は書ける。 自分の話ばかりでごめんね。 平成二十八年八月十四日 金澤奈海

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