100回継ぐこと
[077:横山すじこ]

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佐藤巽くんへ  お返事ありがとう。  手紙を読んですぐに筆をとりました。君にそんなことを言わせてしまった自分が情けないし悔しいから。    まず、君は渋沢さんを誤解している気がするの。  彼は本当に素敵な人です、想像しているよりもずっと。  たしかにプロポーズされて不安になったのは正解。でも彼のせいではないの。これは私自身の問題です。だから、彼を悪く言わないでほしい。  あと、渋沢さんに負けてしまうのかって書いてありましたね。  私、巽くんと渋沢さんを比べたことなんて一度もない。どちらかが上だなんて一度も思ったことないよ。2人とも、とても大事な人です。  私は初めて会ったときからずっと、過去でも未来でもなく今の君を見ていました。  巽くんこそ、過去のままの私を見つめてない?私だって、現在進行形で変わり続けてるんだよ。  そうだ  正直に打ち明けてほしいと書いてあったからこれも、思い切って言うけれど  はっきり言わないで濁したままなのは巽くんも一緒だよ。  私にばかり答えを求めないでほしい。そんなに、立派な人間じゃないよ。  私はただ、君におめでとうって言ってほしかっただけなの。前に進んでいくのを応援していてほしいなんて、わがままかな。  ごめんね。  令和元年 5月7日  金澤奈海 PS  この手紙は、脚本の中のエピソードに組み込まないでね。自分でもおかしいことを書いているのはわかっています。

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