100回継ぐこと
[038:花菜子]

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前略 親愛なる巽壮太くんへ 今回の封筒と便箋も、素敵だね。深い青と白が、夏らしくて良いなと思ったよ。 最近は雨が多いから、早く梅雨が明けてほしいな。 鎌倉の名所には行ったりした? この時期は紫陽花が綺麗に咲いてるってテレビで観たよ。 切手も毎回、見るのが楽しみ。少なくなってきたから、私も郵便局で買ってこようかな。 職場の近くの郵便局の窓口に、若い女の子がいるんだけど、今年採用されたみたいで、「研修中」と書かれたプレートをつけているんだ。でもとてもしっかりしているし、ハキハキしていて、すごく好き。 仕事でたまに行くんだけど、私の苗字も覚えてくれて、ちょっと嬉しい。 渋沢さんには勝てないけど、負けるつもりもない、という文章に笑ってしまいました。 がんばって!……なんてね。 巽くんは職場で気になる女性はいないのかな? きっとそのうち出来るし、私のことはどうでもよくなっちゃうんじゃないかな。少し寂しいけど。 いつも大阪まで私が行ってたけど、本当に好きだったからだよ。会えない日もいつも巽くんのことを考えてた。手紙だと私の方がそっけないくらいなのにね。 遠距離でも大丈夫だと思ったけど、難しかったね。 奈美、と呼んでほしい、と言ったのは、私の方がお姉さんで、先輩で、ずっと立場が上だったけど、歳1つだけという薄い壁を取り壊したい気持ちもあったから。 でも、もう会えない。わたしには恋人がいるので。 初めて知ったんだけど、この前の日曜日、6月12日は「恋人の日」なんだって。ブラジルでは恋人がプレゼントを贈り合うみたいで、渋沢さんからは写真と写真立て、小さな花束をサプライズでもらったよ。 会社の人と登山に行った時の、北アルプスの風景の写真をもらった。長野のお土産でりんごバターっていうのも買ってきてくれた。巽くんのりんごジャムに対抗したみたい(笑) 七里ガ浜の話、幻想的で小説みたい。

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