100回継ぐこと
[066:アオ]

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この前、筆をとらなかったことを謝ったばかりなのに、また日を空けてしまってごめんなさい。 実は、暫く手紙を書くつもりもなかったのだけれど、さっき「島」の近くでアカリちゃんのお母さんを探していた時の夢を見たの。不思議なぐらい生々しくて、目が覚めた時にここはどこだろうって一瞬思ってしまいました。 それから懐かしい気持ちになって、君から貰った木製のレターケースを開けました。アダムスキー型UFOを模したもの、私が中身を添削した白いレターセットのもの、君がさわやかレターセットと呼んでいたもの。いろんな手紙が思い出のように飛び出してきて、それらを一つずつなぞっているうちにこの前買った便箋を手に取っていました。ヴェルヌの書いた月世界旅行の挿絵が入ったものなんて珍しいから、その場で買ったの。本が人間が月へ行くきっかけを作ったなんてロマンチックね。人は文章によって勇気をしばしば与えられる。 いつか、ここから見える景色を舞台に脚本を書きたいと言ったけれど、少し自信を無くしています。脚本を書き終わらせることが難しい、と前に言ったけれど、今は文字を読むことさえも億劫に感じることがあるの。君が原作の漫画もまだ目を通せていません。 次回の公演は延期になるかもしれません。多くは語れないのだけれど、演劇部であった揉め事と受験で生徒達はピリピリしています。私はあまり眠れないまま学校に行って、疲れがたまって、を繰り返しています。この負のループを終わらせないと。 平成三十年 十二月一日 金澤奈海 追伸 寝付けなかったからホットミルクにジャムを入れようと思い立ちました。レシピを見て、片手鍋に砂糖とりんごを敷き詰めて煮詰めたところ底が焦げてしまいました。この琺瑯鍋は気に入っていたから、残念です。

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