100回継ぐこと
[018:ナカタニエイト]

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受験戦争真っ只中の勇者くんへ 師走に入りいよいよ風が冷たくなってきたね。 街のそこかしこが緑と赤にラッピングされて、イルミネーションが輝く季節。なんだか街全体が大きな宝石になったみたい。そんな中を歩いていると、私はついつい空を見上げて赤鼻のトナカイを探してしまいます。 そうやって、街(と私もかもしれないな)はクリスマス一色で浮かれているけれど、君はどうしているかな。浮かれた帽子を付けてフライドチキンにかぶりついているようでは、私の隣に来るなんて100億光年早い。クリスマスだからって浮かれているような人と私との距離は、小惑星探査機はやぶさでも到底辿り着けない程なのさ。 なんてね。冗談。私はそこまでスパルタではないから安心しなさい。受験生の君だって、たまには浮かれたい日もあるよね。私にだって、そういう日はあるもの。 そうそう。12月といえば、演劇部の練習で使っていた体育館の寒さが思い出されます。「骨の髄まで冷え切る」という言葉があるけれど、まさしくその通りの寒さで身に染みました。 しかも、君は痩せっぽっちだからなのか、冬の練習の最中はいつだって厚着をしていたね。その上、さらにどてらを羽織っていた。 その格好を初めて見た年には「なんて軟弱な奴なんだ」と皆からツッコミを受けていましたが、翌年にはどてら姿の厚着の君は、冬の風物詩としての座を射止めていた記憶が蘇ります。 そんな君は、今この時もどてらを羽織って勉学に勤しんでいるのかな。 そろそろセンター試験だね。土日も祝日も冬休みも、ずっと勉強漬けであろう君の姿を思うと、桜の季節に君が私の隣にいる場面が浮かんで来ます。 その時、私が何を言うか、君にはわかるかな。私はその時になって、君はなんと答えるのだろう。君はどんな顔をするのだろうなどと、それを想像したら楽しくなってきます。 私が何て言うか。その時になったら、答え合わせをしよう。それが私からのおまじない。 それから、私の近況を少しだけお伝えします。 私はあの寒い体育館と違って、今は冷暖房完備のホールで演劇サークルの皆と舞台の稽古をしています。11月の学園祭の時は照明係だから、ライトの熱で暑かったので暖房のありがたみを感じなかったけれど、今回は役をもらったんだよ。そうなると、待ち時間の暖房の温かみを実感するね。でも、それにも負けず劣らず、演劇サークルの皆からの熱気もすごいんだけどね。

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