100回継ぐこと
[014:たいらごう]
『前略 巽君へ 君はどうして、巽君なのか。そう思わずにはいられない。君らしいと言ってしまえば、それまでなんだろうけど。 街路樹の葉の色が変わるのは、確かにその終わりを思わせるかな。こちらはもうすぐ、紅葉の見ごろになるわね。 でも、それと髪の色が変わることとは別物よ。紅葉は落ちれば終わりだけど、髪の色は元に戻るわ。いや、来年また新しい葉が出てくると考えるなら同じかしら。 君が何を言いたいのか、何を思っているのか、分からないわけじゃないけど、急がないで欲しいの。 桜も紅葉も、盛りの期間が短いからこそ美しいんだと思う。でも、君との関係をそんな刹那的なものにはしたくない。 それに、これまでの私の手紙や、君の家に行った時のこととかから、はっきりと言葉にしなくても、私の気持ち、分かって欲しい。 ずるいのかな。そうね、ずるいのかも。 ああ、私、何書いてるんだろう。でも、このまま書き続けます。君も、私の飾らない気持ちを知りたいだろうし。 君は今、受験に向けた大切な時期にいます。君が大学に受かれば、来年の私は、君の傍にいるに違いないし、名前で呼ぶのはそれからって言ったはずよ。 会いたいと言ってくれるのはとてもうれしいし、私もそう思ってる。でも、君がそういう風に言えば言う程、今の私が君の勉強の邪魔をしてるんじゃないかって心配になるの。 いつも、心の中で祈ってるよ。君が合格しますようにって。 だから、しっかり勉強して、大学に合格して。私の為にも、ね。
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