100回継ぐこと
[083:黒蜜柑]

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金澤奈海様 長い雨が続き、世の中が大変な今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか。最近、僕の仕事にテレワークを導入することになり、中山や担当編集の方とネット上でやり取りをするという慣れない日々に追われています。でも、いずれ慣れちゃうんでしょうね。きっと。 先輩がまた脚本を書きたいという気持ちになっていると知って、僕はすごくびっくりしました。手紙の文面だけで伝えるのはすごく難しいけど、この手紙を書いていた時、ペンを握る僕の手元が震えていたのはここだけの秘密です。 決して悪い意味なんかじゃないです。武者震い、っていうヤツです。まさかこのような形で僕が興奮してしまうだなんて思いもしませんでしたから。 先輩もあの時の僕と同じようにスランプに苦しんでいたんですね。 でも、あの手紙を書いてくれた先輩はとにかく嬉しそうに見えたんです。まるで明日が来るのが待ちきれなくてうずうずしている無邪気な子供のように。 頭の中にはアイデアや題材がどんどん湧き出ている中、自分一人では抑えきれない程のワクワク感で心の中に溢れている。そんな先輩を想像していると、なんだか微笑ましく感じてしまいました。 そう思っているうちに、記念祝賀会が中止になってしまったことに悲しんでいる暇はないなと思ったのです。連載を待ち望んでいるファンを驚かせたい。そして、先輩の『脚本を書きたい』という気持ちを後押ししたい、と。 だから……どうか見ていてください。生まれ変わった僕と、パワーアップした連載を。 先輩をもっと『脚本を書きたい』と思わせられるような期待感とワクワク、そして興奮を見せてあげます。 ところで、今日の誕生花であるタチアオイの花言葉が『豊かな実り』と『野望』なんだそうです。僕の決意が『野望』という言葉にふさわしいのか分からないけれど、少しでも先輩の脚本が豊かに実ることを願っています。 令和2年6月15日 佐藤巽

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