中途半端ブルース
9話 目覚め

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 とにかく音楽というものに疎かった僕は、まず何よりも曲を知らなかったので、ギターで弾くための曲を知りたいと思い、教則本に出てくるアーティストの名前をメモって、そのアーティストのCDをTUTAYAや図書館に行って漁るといった事から始めた。(バイトもしていなくお金が無かったので、CDを買うよりも借りる方法を選んだ。特に図書館は無料なのでこの頃はかなり重宝した)  また、今までは全く見ようともしなかった音楽番組などを観て、今流行っているアーティストや曲のチェックも始めた。  そんな感じで徐々に音楽(ロック)を知っていった僕に、最初にどでかい衝撃を与えたアーティストがある。  そして、おそらくそれが、本当に自分が音楽にどっぷりハマるきっかけであったに違いない。  そのアーティストは、世界中の誰でも知っている、ザ・ビートルズである。  もう、完全にノックアウトされた。  幸いビートルズのCDは図書館にたくさんあったので、片っぱしから借りてはカセットテープに録音して(この頃はまだMDすらなかった)テープがびろびろになるまで超ヘビーローテーションでひたすら聴きまくった。  こうしてビートルズにハマッた事が、音楽そのものにハマる事へと繋がったのである。    これは、自分のその後の人生にも大きな影響を与えたと言っても過言ではない。  それぐらい自分にとって「大きな出逢い」である。  さらに、自分にとってもう一つ、大きな出逢いがある。  それはエックスとの出逢い。  僕はビートルズで完全に音楽に目覚めたのであるが、肝心のギターの方はというと、まだそこまでという感じだった。  もうひとつハマりきらなかったのである。  しかし、エックスとの出逢いによってそれは大きく変化する。  そもそもエックスとの出逢いのきっかけは、二年生の時、同じクラスで仲が良かった男で、大のエックス好きがいたのである。  そいつに無理矢理薦められ、半ば強引に聴かされたのだが、気がついた時には、自分も完全にハマッていた。  ビートルズ同様、ウルトラヘビーローテーションでテープが擦り切れるぐらいに朝から晩まで聴き倒した。  このエックスへの傾倒が、自分をロックへと目覚めさせたのである。  ビートルズが音楽への目覚めなら、エックスはロックへの目覚めである。  このロックへの目覚めが、ギターの没頭へと繋がるのである。  ビートルズとエックスとの出逢い、それは自分にとっては正しく「晴天の霹靂」とでも言える程の衝撃的なものだった。  この脳天直撃の出逢いによって僕は、ゲーム大好き少年から、ロック大好き少年へと様変わりしたのである。  ギターとロックがもはや生き甲斐、いや、生活の一部になっていたほどで、家に居る時は、食事と風呂と睡眠以外は、ギターを弾いているか音楽を聴いているかのどちらかだった。  本当におまえ大丈夫か?というぐらいギターとロックにどっぷりだった。  学校でも、友達とする話といえば真っ先にギターとロックの話だった。  あの曲のリフがどうだ、あの曲のソロがどうだ、そんな話ばかりしていた。  学校の休み時間にはよくこんな遊びをやった。  それは「くちジャム」という遊びだ。  例えば四人いたなら、一人がギター、一人がベース、一人がドラム、一人が歌、というようにパートを分けて、みんなそれぞれのパートのフレーズを一緒に口ずさんでジャムるのだ。  これが「口ジャム」である。  さらには一人で全パートを口ずさむといった荒技もある(暴走)。エアギターならぬエアバンドである。  こんなバカみたいな遊びを本当に毎日のように飽きずにアホみたいにやっていた。

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