中途半端ブルース
6話 初恋

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(ニ)    中学校に入ると、僕は初めて好きな女の子ができた。  しかもひと目惚れである。  二重まぶたのパッチリした瞳で、線は薄く、優しい雰囲気の可憐に明るい美少女。  ひと目見て「めちゃくちゃ可愛い!」と思った。  理由も何もない。  その瞬間から好きになったと思う。  一番最初の席替えで彼女と隣同士の席になれた時は「こ、これは運命か!?」と心の中で絶叫し、半ば半狂乱で興奮した。  かといって、隣同士でもそんな気軽に話しかける事などとてもじゃないができず、授業中にそれとなく彼女の横顔を見て「可愛いなぁ」と思っては胸がキュンとなった。  ある時、僕が授業中に、自分のノートに友達と落書きをし合って遊んでいると、それを見ていた彼女が「貸して」と言って微笑み、ノートを渡すと、実に女の子らしいタッチの絵を落書きしてくれて僕に返した。  僕はノートを見て「俺のノートに、俺の所有物に、彼女の手で書かれたものがある!」と思って死ぬほど嬉しくなり、しかし表向きは、何も気にしていない、いや、むしろ、なんだよ、ぐらいの態度をとりつくろった。  家に帰ってから部屋で一人そのノートの彼女の落書きを見て、はぁ~っと胸が熱くなり、ますます想いを募らせた。  しかし、そうして彼女への想いがどんどん強くなるにつれて、僕は今まで以上に彼女とまともに話せなくなり、気持ちとは相反する態度しかとれず、やがて彼女に話しかけてくる男子はみんな彼女の事が好きなんじゃないかと思い、卑屈に距離を置いて嫉妬心をぐつぐつ燃やし、必死にそれを抑えようとひたすら苦しんだ。  そうして結局何もできないまま、二年生のクラス替えで、彼女とは別々のクラスになってしまい、それっきりになった。  これが僕の初恋。  やはり、初恋というのは特別なもののようで、今でも、この初恋の彼女と似たような雰囲気を持った女の子がいると、その雰囲気だけで妙にドキドキしてしまう。  そんな初恋の思い出もある中学時代、それでも僕は相変わらずゲームばかりやっていて、それは三年生になっても続いた。  変わった事を無理矢理言うなら、さらに映画とプロレスが加わり、コロコロコミックがジャンプになり、家でするゲームに加えてゲームセンターにも繰り出すようになったぐらいだ。  友達と遊んでいる時もゲームばかりやっていて、しかも小学校の頃のような外での遊びが著しく減った分、僕はより篭った、より文化系濃度の濃い少年になった。

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