中途半端ブルース
3話 猫とAV

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 また、伊藤君の家での、ゲームとフィギュアの遊びの思い出以外で忘れられないのが、ペットのヤマトという猫との思い出だ。  実は伊藤君は、早くにお父さんを亡くし、兄弟もいなく、当然お母さんは働いていて、一人でいる事が多く、まあそれがゲームをやりまくれる環境に繋がっていたのだが、そんな息子を少しでも寂しくさせないために、お母さんが猫を飼い始めて、ヤマトと名付けられたそいつと伊藤君と僕は、いつも二人と一匹で仲良く遊んでいた。  拳のような尻尾をした、体は少し小さめの黒猫のヤマトは、猫にしては珍しいぐらい人懐っこい奴で、僕が伊藤君の家へ遊びに行く度に「ニャ~!」と言って走って出迎えてくれるとても可愛い猫だった。  僕も伊藤君も、このヤマトの事が大好きだった。  ヤマトなくしてこの思い出は語れぬ、というぐらいである。  思えば、このヤマトとの出会いが、僕の猫という生き物への恋の始まりだったように思う。(未だに片想い)  数年後にヤマトが亡くなった時、僕ももちろん悲しかったが、伊藤君の悲しみようは、僕とは比べ物にならないぐらい凄まじいものだった。  伊藤君は、朝、他の生徒達がキャッキャしながら登校している中、一人泣きながら登校してきて、騒がしい教室の中で一日中泣き続け、また下校の時も、一人よろよろと泣きながら家に帰って行ったのである。  そういえば、伊藤君の家で遊んでいる時にこんな事もあった。  ある日、僕はいつものように伊藤君の家で、その日はもう一人別の友達も来ていて三人で遊んでいたのだが、そのもう一人の友達が、どこからか一本のビデオテープを発見した。  みんなで「なんだろうこれ?」と思い、好奇心でそのビデオテープをデッキにセットし、観てみると、アダルトビデオだった。  しかも、洋物の所謂無修正で、今思えば、内容的にもかなりハードなものだったように思う。  これが僕のAV初体験である。  そして、まだ純真無垢な小学二年生の少年にとってこのビデオに映されたものは、エロというよりも、ただのグロテスクな衝撃だった。  僕はそのビデオを観て吐き気を催したのを覚えている。  以降、これが一種のトラウマのようになってしまい、僕は高校生になっても、AVを観ると気持ち悪くなるようになってしまったのである。  そういえば、この話から、一つ全く別の話を思い出した。  それはある男の話なのだが、その男は二十歳で、まだ童貞だったのだが、ある時、友人に誘われ風俗に行った。  そうしてその男は所謂素人童貞というものになったのであるが、その時、男は風俗嬢を見て「女はみんなこんな生き物なのか!?」と思ってしまい、それから男は女性不信になってしまったのである。  風俗嬢には何の罪も無いが、とにかく、何事も「初めて」というものにはある程度気をつけなくてはならないようだ。  特に、性に関するものは、人生に及ぼす影響も計り知れない。  女の子は特に注意が必要だろう。  僕の場合、このAV初体験のトラウマにより、人よりも性の目覚めが遅くなってしまったように思う。

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