コンビニ店員は朝焼けに謡う
コンビニ店員は憂鬱な日々に文句を言う

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 レジのテーブル、客がライターと栄養ドリンクを無造作に置く、その客の動作に不機嫌という感情が見て取れる。  不愛想な顔立ちの客が、言葉を出さず、ただ指をさして店員に指示を出す。 「えーっと、お客様、おタバコでよろしいでしょうか?」  そう質問した店員には何も悪気はない、なぜなら、お客の指さす方向にはたばこもあるが、お惣菜や揚げ物の入った保温気もあるのだから。  先ほどの不機嫌な顔に、怒気が肥大に含まれてく客が口を開く。 「126番!」 「は、はい! 分かりました」  突然大きな声を出して、たばこの番号を指定するお客。  そんなお客に聞こえないように、店員が小声でつぶやく。 「最初から、そう言えよ、バカが」  店員は、126番のたばこを手にして、レジへと戻る。  お客は、特に何も言うことなく、店員がたばこを持ってくるということが、当たり前だとでもいうかのような態度に、店員は、苛立ちを覚えるも、その感情を表情として出さずにお会計を済ませていく。  ささやかなやり返しとして、袋をつけるかどうかは聞かなかったようだ、そのままお会計を終わらせて、お客はライターとたばこをポケットに乱暴に入れて、栄養ドリンクを持って、店を出て行った。 「ったく、ニコチンが足りてないのかよ」 「こらこら、晃君そんなこと言っちゃだめだよ」  怒鳴られた店員の事を晃と呼ぶのは、先ほどまで、揚げ物を揚げていた。おばちゃん店員の北爪さんだ。 「北爪さん、そうは言われても、むかつきませんか?」 「もちろん、むかつきますよ、でも文句言ってたら、自分の運気が下がるんですよ」 「下がりませんよ、そんなことで」 「いいえ、今日の朝にテレビで言ってましたもの」 「テレビなんて、七割がた嘘で出来てるんですよ、うのみにしないほうがいいですよ、テレビの情報は話半分に聞いておくほうがいいです」 「はいはい、あっ、晃君ゴミ出しお願いできる?」 「分かりました」  北爪さんにお願いされて、ゴミ出しをする晃。  少しばかり重いゴミを持って、店裏に行くと……。 「ねぇ、君ちょっとくらいいいじゃない?」 「や、やめてください」  店裏のゴミ捨て場で、文字通り嫌がる女の子に迫る、派手な服装と髪のゴミがいた。  晃が、その様子を見ていると、ゴミと目が合う。 「あぁ? んだよお前、何か用か?」 「いや、そこにコンビニで働いてる者だけど、ゴミを捨てに来たんだ」 「そうかよ、んじゃ、そのゴミを捨ててさっさとどっかに行けよ」  ゴミにそう言われた晃は、ゴミを捨てるための倉庫の鍵を開けて、そこに持ってきたゴミを入れた後。 「ちょ、何すんだ! 離せって、力つよ」  女の子に迫っていた、ゴミも一緒に倉庫の中に投げ入れて、鍵を閉めてしまう。 「警察来るまで、そこに居やがれバカが」  男がどんどんと扉を叩く、中からふざけるな! とか出せ! とかという男の怒号が聞こえる。  そんな声を気にすることなく、晃は女の子の方へと行く。 「大丈夫か?」 「は、はい、ありがとうございます」  女の子は制服に身を包んでおり、学生だという事が分かる。  特に晃は、女の子の来ている制服のリボンに目が行く。 「新田暁高校か」  突然学校名を言われた、女の子はしどろもどろになりながらも……。 「えっ、はい」  小さく返事をする。 「そうか、まぁ気を付けて、学校に行ってくれ」  晃はそれだけ言うと、背を向けて、お店の中に行ってしまう。 「……、なんかどこかで見た顔だなぁ」  女の子は去っていく晃の背中を見て、学校へと向かう道を歩き始めた。

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