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 あの日、私の名前「ソフィア(知性)」を褒めた男。  ジェームズ。  彼の本当の目的は私だったのだ。アーニャがあとで白状した。彼女を通じて彼は私に近づいたのだ。  そう、近づいたのだ。「近づこうとした」のではない。なぜなら、私も彼に心惹かれているから。  黒に近い髪の色、優し気でいたずらっぽい目元。彫りの深い知的な顔立ち。  彼は数学者だった。しかし詩を書く。またか。私には詩の造詣はないのに、またしても詩人に恋を告白されたのだ。  ジェームズはいきなり私に失礼な態度をとるようなことはなかった。彼はアーニャを通じて私と直接話をし、私が彼の想像通りの人間かどうかを確認しようとしたのだ。私は終始観察されていることを意識した。だんだんと私は目を伏せがちになった。彼の顔を正視できなくなっていた。  私は、このひと時の間に、恋に落ちたのだ。  そう、私はヒースクリフとつき合っていると言えなくもないが、恋に落ちたとは言えなかった。ヒースクリフの美しくはないが邪気のない瞳を拒むことができなかった。「君なしには生きられない」。彼の言葉に偽りは感じなかった。私は同情で彼につき合っていた。もともと、私は本当の恋などしたことはない女だったのだ。

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