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 ヒースクリフの様子を見計らって、私は休憩を提案した。彼は名残惜しそうだったが承諾した。私はそのままキッチンに立ち、買ってきて冷蔵庫にしまっておいた食材を取り出した。何もしていないとお腹が空く。早めに料理を準備しておこうと思ったのだ。  ニンジンやジャガイモやセロリや玉ねぎを刻んでスープを作ろうと思っていた。考えごとをしながらしていたためだろうか。思わず包丁の刃が滑り、左薬指を切ってしまった。血が滲み出て、野菜を赤く染めた。そのとき、私に意地悪な考えが浮かんだ。  キッチンからの良い匂いが室内に漂い始めた頃、ヒースクリフが現れた。さすがに腹が減ったらしい。そして食卓を見て怪訝な表情をしたのだ。 「あれ、僕の分はないの」  私はすでに自分の分のスープとお肉のソテーとブレッドを食しはじめていた。彼の分の食卓は用意しなかったのだ。 「あなた神経質だから」  私は言った。 「私の血の入ったスープなんて、食べたくないでしょう」

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