ヘルマプロディートスの縊死
チューベローズ(2)

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 ぼんやりとまぶたを上げたとき、薫の視界に飛び込んできたのはいかにもなコンクリートの天井だった。薫は頭を振り経緯と状況を整理してみる。  夜来がメッセージで指定したのは壮花駅。薫は人気のない改札口に連れて行かれ、停めてあった車に乗るよう促された。  助手席のドリンクホルダーにはペットボトルがあった。月子の好きなミルクティーだ。  飲むように熱く勧められ、断り続けていたらいきなり首筋にスタンガンを当てられた。びりっとしただけだが、とっさに気を失ったふりをした。このままだとクロロホルムでも嗅がされそうだと感じたからだ。あんなのはただ臭いだけなのに。  ガムテープで手首を縛られ、目を閉じたまま耳を澄ませて車に揺られた。一時間以上はかかった。都を出たか、市部かまでは分からない。高速に乗らなかったことは確かだ。  夜来は駐車を終えると、薫を背負って移動した。脚を拘束しなかったのはおんぶ状態に差し障るからか。運び込まれたのは地下室だった。夜来は薫の身体を硬い場所に横たえ、慌ただしく出ていった。  扉の音は重い。しばらくは動いても気付かれないだろう。  薫は腹筋の要領で起き上がった。ベッド脇にカラーボックスがあり、黄ばんだノートとキャップ付きのボールペンが無造作に置いてある。薫は自由にならない両手でペンを手繰り寄せる。口を使ってふたを開け、両足の裏をくっつけかかとでペンを挟んで固定。先端に手首のガムテープを叩き下ろして穴を開ける。少しずつ手の位置をずらしながら、テープにいびつな点線を入れていく。仕上げに両腕を左右に強く引くと、ばつばつと音を立て拘束が裂けた。  薫は内出血した肌をさすって一人で笑う。  ――ボールペン一本で脱走か。ハンニバル・レクターみたいで悪くない。  立ち上がり室内を見回す。  ネット通販で買えそうな折り畳み式ベッド、キャスターもついていないカラーボックス、百円ショップに並んでいるプラスチックトレー、しわだらけのブルーシート……なんというか、『殺人鬼の秘密の部屋』としては随分安っぽい。  薫は襟元から手を突っ込み、ブラジャーのパッドを取り出した。左にはミニライト、右にはミニハサミが仕込んである。  薫は左手でライトを顔の高さに持ち、右手でハサミを握って隣の部屋に踏み入った。  丸テーブルが一台、一脚きりの椅子は壁を向いている。薫は舌打ちして壁に歩み寄る。  剥き出しのコンクリートに、緑の養生テープでべたべたとポラロイド写真が貼ってあった。どれもこれも似たような構図で、カメラ目線の夜来と裸の女のツーショットだ。  女は意識がないらしい。四肢の角度が不自然な写真がある。枚数の割に人数は少なく、全部で三人だけのようだ。三つ編みハーフアップの女、ウェーブボブの女、そして額を出した高めのポニーテール――五条あやめ。  薫の手中でハサミがぎちぎちと鳴る。 「その子たち? 俺の元カノだよ。まぁそこそこかわいいだろ?」  夜来のねばついた声。髪をつかまれ首がのけぞる。薫は躊躇なく両肘を引く。左に手応え。夜来の指が緩む。薫は身体を反転させ、右手で夜来の前髪をハサミごとつかむ。 「汚ェ手で気安く触るんじゃねェよ。童貞野郎」 「今なんつった?」  夜来は血走った目で薫の右手首をつかみ返した。 「おまえ、今、俺のこと何て言った」 「自覚がねぇなら何度でも言ってやるよ。童貞クソ王子」  薫も引かない。ワックスでべたついた髪を握り潰し夜来と対峙する。 「何が元カノだ。スカスカの『モテコーデ』で武装しても、無抵抗の女しか犯せなかった自己中ヘタレ野郎が」 「黙れェア!」  夜来は甲高い声を上げ右手を突き出す。刃物のきらめき。薫は避けずに前へ。左手で夜来の肘を内からつかみ、右肘を喉に叩き込む。夜来の咳を浴びないよう間合いから離脱。夜来は首を押さえてふらふら揺れている。 「ヴぉレ、お、俺はどうでじゃない……童貞じゃない……」 「うるせえな、童貞で悪いか!」  薫は夜来の耳を狙い上段回し蹴りを一閃。スカートが翻る。夜来は口からくぐもった音を立て崩れ落ちた。 「パンツなら今回は特別サービスだぜ」  薫は鼻を鳴らして長髪をかき上げた。  小春野薫。女性的なのは衣装だけで、性別・性自認ともに男――ちなみに童貞。透け防止のペチコートの中はスカルのボクサーパンツで、月子とデートするときだけは女装用のフリフリレースを穿く。  薫は夜来が気絶しているのを確認し、右手からカッターを抜き取った。  リズミカルに階段をのぼる。脱出ゲームと違って、複雑なオブジェクトを組み合わせなくてもサムターンの内鍵は容易く回る。  薫は鉄製の扉に体重を乗せていく。風が強い。開いたそばから押し返してくる。ヘアピンなしの黒髪がばたばた乱れて鬱陶しい。 「ッ、ソが!」  とても人様にお聞かせできない悪態と共に、扉を蹴破って部屋の外に出た。離れの地下室だったようで、周りは背の高い木ばかりだ。隣近所は見えず、陽はすっかり落ちて外灯の類もない。 「ホラー映画じゃねぇんだぞ、マジで」  薫は手櫛で髪を整え、人の気配がない母屋に近づいていった。  白い壁に黒い屋根の洋館だ。玄関からのこのこ行けばレザーフェイスに引きずり込まれそうで、手頃な石で裏手の窓を割った。警報が鳴って警備員が駆け付けてくれないかと淡い期待もしたが無駄だった。電話を見つけて自分で通報することにする。  鍵を回し窓を横に滑らせた。ライトでサッシと内側の床を入念に照らす。 「『サプライズ』だったら、ここに罠あんだけど……」  手のひらや足に突き刺さるトラップはなさそうだ。窓枠を飛び越え中に入る。  左手にミニライト、右手には夜来から奪ったカッター。転んだら危険なので刃は出さずにおく。ミニハサミはケースに戻して胸元に納めた。  二階建ての大きな屋敷だ。大学生が一人で住んでいるとは考えづらいが、気配からして今は無人らしい。  最初のドアを恐る恐る開ける。ウォークインクローゼットだ。紳士婦人用の上等な服が何着もかかっている。隠れている被害者はいない。映画とは違う。  薫は嘆息し、次の扉に手を伸ばした。今度は広い部屋に繋がっていた。リビングだろうか? こういう場所なら固定電話のひとつぐらい置いてありそうだ。  電気を点けるのはリスクが高い。ミニライトの乏しい明かりで慎重に進んでいくと、木製ラックの上に黄緑色の光があった。給紙トレーを備えたファックス付き電話だ。 「通報……!」  電話に駆け寄り受話器を取りかけたところで――顎に激痛。薫は一拍遅れて事態を理解する。夜来だ。床に這いずり、意味不明な呪詛を吐きながら薫の右足首をつかんでいる。 「死ね! しねしねしねしね死ね!!」  夜来は薫の足元に繰り返し包丁を突き立てる。駄々っ子のような動きだが笑い事ではない。薫は少しでも離れようと身体をひねる。避けきれなかった靴下が無惨に裂ける。  途端、別の感情が危機感を凌駕した。 「っざけんなよ! 高ェんだぞその靴下!!」  薫は左足で夜来の顔面を蹴る。足首を握る手がぼろりと外れる。  シアー素材のレース編み風靴下、一足税抜き一二〇〇円。しかも黒の花柄は一番人気で再販待ちなのに。  薫は膝立ちで右手の親指を素早く動かした。カッターの刃が最大まで滑り出る。腰を上げる前に夜来が飛びかかってくる。逆手での振り下ろし。迎撃。夜来の包丁を逸らした勢いで薫のカッターの刃が弾ける。 「きひッ」  夜来は裏返った笑い声とともに、包丁を順手で握り直す。薫は胸元のミニハサミをケースから抜き放ち身体を沈める。  夜来が荒々しく腕を伸ばす。薫は腕の下をくぐる。鎖骨の下に突き立てる刃物。吠えながらのけぞる夜来。薫はバスケットボールよろしく夜来の頭を両手でコントロールする。 「お、ちろ!」  顎を下にワンバウンド。まだだ、もう一回!  夜来の身体から力が抜け、四肢がフローリングにだらりと広がっていく。薫は息を弾ませ、片腕で額の汗を拭った。 「手こずらせやがって」  つい悪党みたいな台詞を吐いてしまった。  薫は夜来の背にまたがり両手を後ろに持ってくる。胸のリボンタイを解くと、眉をひそめて夜来の両手首を縛りつけた。これ、気に入っていたのに。  親指も結んでおきたかったが他に紐状のものがない。ひとまず夜来のベルトを外して足首を拘束、腹の虫が治まらず尻を丸出しにしてやった。  立ち上がり、なるべく哀れを誘う声で警察に電話した。向こうも探知はしてくれているのだろうが、電話の脇に差してある郵便物の住所も伝えておく。  受話器を置くと、薫は正面の壁を見上げた。  コルクボードがかかっている。カラフルなピンで何枚も写真が留めてある。両親と思しき男女はどれも笑顔だが、子供は赤子のときから大学の入学式にいたるまで一枚も笑っていなかった。不機嫌という風でもない。何も感じていない表情。薫はコルクボードを一度だけ殴った。  嘆息して、台無しになった靴下を脱ぐ。血がにじんだくるぶしを黒い布で拭う。女性ものの靴下を握り潰し、十年前に想いを馳せる。  ――あいつもそうだった。親に愛され甘やかされて、一線を越えても他人事みたいな無関心で。  六歳の誕生日、薫はプレゼントにどうしてもカブトムシが欲しかった。なのに両親が買ってきたのはクワガタ。喚いて暴れて受け取りを拒否し、家出と称して近所をうろついた。  月子は友達と別れて帰るところで、泣いている薫に気付き声をかけてきた。事情を聞く間、月子はずっと薫の手を両手で包んでくれていた。 『じゃあ、明日のおやすみに、いっしょにカブトムシつかまえにいこ! わたしからカオルちゃんへのプレゼントね!』  名前は月なのに、お日様みたいにあたたかい月子。薫は頷いて、月子と手を繋いで家に帰った。  親には言わなかった。その頃、隣の小学校で女子児童が行方不明になる事件が起きて、大人たちは子供の帰る時間や行く場所を制限しようとしていたのだ。けれど薫たちにとっては遠い世界の、関係のない出来事だった。  翌朝、薫は両親の目を盗んで約束の公園に行った。月子はまだ来ていなかった。お腹が空くまで待っても来なかった。我慢ができなくなって、月子の家まで迎えに行くことにした。  ピンポンを押して月子を頼むと、おばさんは真っ青になって薫の肩をゆすった。 『薫ちゃんと遊ぶって今朝早く出かけたのよ』  薫はやっと『ゆうかいはん』の存在を思い出した。  そうだ。月子はきっとさらわれたのだ。大人の言うことを守らなかったせいで。薫がわがままを言ったせいで!  いなくなった女の子もかわいかったって言ってた。月子はかわいいから、かわいい女の子をつれていく悪いやつにさらわれたんだ。ぼくのせいで。  だったら――。  サイレンが響いている。ドアチャイムがうるさく鳴っている。ドアを叩く音に、警察ですという怒鳴り声がまざっている。  薫は後悔を中断し、夜来の背中を踏みつけてから優雅に身なりを整えた。  あとは、なるべく被害者であることを強調しなければならない。正当防衛の要件は結構厳しいのだ。 「ちょっと泣いとくか……」  強く目を閉じる。  現在の光景を遮断すると、いろいろな映像がまぶたの裏をよぎった。六年前のあの五月の日。月子の笑顔。  そして。  薫はゆっくりと目を開ける。乾いた頬を涙が流れ落ちていく。  覚束ない足取りで、薫は玄関まで歩いていった。 「薫ちゃんの、バカっ!」  自室に乗り込んできた月子に、あージェラピケのオールインワン買っといてよかったーと薫は内心苦笑した。  すっぴんで普段着の中学ジャージを着ていると、あまりにも男に見えすぎる。 「危ないことしないでって言ったのに、どうして約束守れないの⁉」  月子が詰め寄ってこようとする。薫はペディキュアの刷毛と瓶を月子に見せる。おしゃれに免疫のない月子がたじろいだ隙に、薫は最後の爪を塗り終えた。 「別に危ないことなかったよ。ちょっと悪者退治してきただけ」 「それが危ないことなんだってば!」  月子はむくれてベッドに座った。思いきり尻を落としたのだろうが軽くて大した音がしない。薫は黙ってピンクのペディキュアの蓋を閉める。  強がりを言ったのではない。夜来――あの後の報道によるともっとありふれた名字――は、殺人鬼と呼ぶにはかなりお粗末な人殺しだった。人を気絶させる方法も効果的に拘束する方法も知らない。取り調べで、薫以外には睡眠薬を盛ったと証言したらしいが、それでも三人も殺せたのはまぐれのようなものだ。 「薫ちゃんは自信あるのかもしれないけど、そう何度も上手くいく保証なんてどこにもないんだよ。五条さんだって……」  月子は自分の両腕を抱いて背を丸めた。ただでさえ小柄な月子が身を縮めると、そのままなくなってしまいそうな気がする。薫は見ないふりをして腰を上げた。  人見知りの月子が、社交的な五条を内心苦手にしているのは察していた。だがどんな相手であれ、月子の優しさは死者を正しく悼むだろう。だからこそ五条のことをわざわざ引き合いに出したくない。  背を向けて発する声は思うより低く硬くなった。 「オレは正義の味方をしたいわけじゃない。ただ月子を守りたいだけだよ」 「だからそれが……!」  月子は吐き出しかけた台詞を途中で飲み込んだ。堂々巡りであることに気付いたのかもしれない。  振り向くと、月子は顔を覆って泣いていた。駆け寄って慰めたいのに、薫の脚は無様に震えて動かない。 「ごめんね。薫ちゃん」  悪くもないのに月子は謝った。ごめんね、ごめんねとしゃくりあげながら繰り返す。薫はかける言葉を持っていない。十年前からずっと。  月子がさらわれたと確信したとき、薫はまず姉の服を着て家を飛び出した。『かわいい女の子』が狙われているのなら、自分が犯人と接触する方法はそれだけだと思ったから。  学校も行かずに歩き回った。  月子と約束した公園、いなくなった女の子が通っていた学校の近く、暗くなると人が少なくなる道。  月子が消えた二日後、薫は無事犯人に声をかけられた。ポケットの中で一一〇番を押したこどもケータイには気付かれず、男の家まで大人しくついていった。  立派な母屋があった。男が趣味の部屋にしていたのは物置。大人がどうにか座れる程度の狭い小屋だ。口をテープで塞がれた月子がぐったりと横になっていた。男の目を盗んで薫が名前を呼ぶと、月子はうっすら目を開けた。  ああ、月子は生きている。助けられる。  月子は何故か、両手・両足ではなく右手と右足・左手と左足を結ばれていた。薫はできる限り月子に寄り添った。  男がベルトを外し終わる前に、大人たちがいっぱい押し寄せた。警察だと言っていた。一人のおじさんが走ってきて、きみたち大丈夫かと月子の口のテープを剥がした。太い指がロープをほどこうと肌に触れた瞬間、月子は――。 「わたしがおかしくなったからって、薫ちゃんまでおかしくならなくていいよ」  泣きじゃくる月子を抱きしめられるなら、薫だってそうしたい。だが月子はあの事件以来、男性に触れられるとパニックを起こすようになった。月子に噛みつかれた『刑事のおじさん』の、動揺と後悔に染まった顔を薫は今も忘れることができない。 「おかしいって失礼じゃない? オレ楽しくて男の娘(こ)やってんだよ。好きだから頭から爪の先までかわいくしてるの。ただ女装するなら服だけでいいんだから」  薫は両手を後ろで組んで、なるべく愛らしく見えるように身体を傾けた。爪の食い込む手の甲に痛みはない。本当に痛いのはそんな場所ではない。  口から出た台詞は、半分本音で半分嘘だった。  女性ものの服を着るだけでは『女』には見えない。顔や手足の毛を入念に処理し、気に入った服に釣り合うメイクや髪型を考え、プロポーションを維持する。生来の性が男以外であったとしても、『女』に見られたいと望む限り薫は同じ努力をしただろう。  同じことなら女に生まれておきたかった。カブトムシを欲しがったりせず、姉と家で人形遊びをする六歳の女の子なら、早朝の公園に月子を連れ出すこともなかった。月子を傷つける不幸が起きたとしても、薫は月子と抱き合って涙することができたのだ。 「見てこれ、限定色のシルキーピンク。綺麗に塗れたでしょ?」  差し出す片脚は数メートルも離れていないのに、月子の座るベッドは何キロも遠い気がした。  匂いの苦手な豆乳を毎日飲むのも、筋肉の隆起がボディラインに響かないよう運動をセーブするのも、ニキビの気配を即座に察して対処するのも、喉仏が出ようとするたび机の角に全力で打ちつけて潰すのも、何もつらくはない。  スカートで通った六年間も、ジャージで押し切った三年間も、ワンピースを揺らすこれからの三年間も、その先の未来も全部全部月子にあげたい。  ――いつか君が、別の男の隣で白いドレスを着るときが来たって、ずっと。 「ね。笑ってよ。月子」  鼻声はちっともかわいらしくはなかったけれど、月子は顔を上げてくれた。東京に記録的な大雪が降った日、『世界中みんな雪の下で眠ってるみたいだね』と呟いたときの、静かに冷たく全ての終焉を願う表情だった。 「薫ちゃん」  月子がゆっくりとベッドを離れる。薫は月子の手振りに従ってその場に腰を下ろす。両膝をくっつけた『女の子座り』。  月子は薫の正面に正座して、リュックサックから大事そうに白いハンカチを取り出した。杜若に頼んでおいたものだ。  チューベローズのヘアピン。月子の手製。壊れてしまったと泣いて謝ったときも、すぐ直るよと魔法みたいに元に戻してくれたお守り。 「薫ちゃん。目、閉じてて」 「うん」  薫は顎を少し上げてまぶたを下ろした。口唇は上下が軽く触れ合う程度にやわらかくキープ。ちゃんとかわいく見えているだろうか?  月子の指が横髪をすくって、銀色のピンを地肌に沿って滑り込ませていく。  バニラの甘い香りがした。手首にフレグランス? そんなの、月子までまるで女の子みたいだ。 「月子」  薫はほのかな光だけを感じながら、最愛の人の名を呼んだ。  キスができなくても、手を繋げなくてもいい。 「つきこ」  これからもずっと一緒にいよう。  こんなに隣り合っても永遠に目を合わせられない、純白の小さな花たちみたいに。  ずっと、ずっと。

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