洛陽の月
布陣のキーマン

 翌日の放課後、権丈は平岡案をほぼそのまま採用したメンバー表を携えて監督室に出向いた。  軽くノックしてから入室すると、大葉監督はホワイトボードにインターハイ予選初戦の相手である京都星章高校のフォーメーションを書き込んでいた。 「メンバー表を持ってきました。確認お願いします」  ホワイトボードから目を離し、メンバー表を両手で受け取った大葉は書類の内容にさっと目を通した。  学年別に並べた登録メンバーには二人の一年生が入っている以外にさほど目新しい点はないため、大葉も人選に関しては特にコメントはないようだった。 「黒田君はフォワード登録でいいですか」 「はい。本人もそのように希望していました」  大葉がメンバー表を見つめながら顎をさすった。 「彼をセンターフォワードで使いたいのは山々なのですが、どうしましょうかね」  ホワイトボードに向き直り、京都星章の5―3―2のフォーメーションを眺める。ゴール前に五人のディフェンダーを配した布陣は城壁のように強固で、堅守速攻が持ち味のチームだ。  フラットに並んだ4バックの後ろにもう一人ディフェンダーがおり、カバーリングを専門とするため、掃除人スイーパーの異名で呼ばれることもある。 「ゴール前はがちがちですからね。これをこじ開けるのは大変です」  大葉は腕組みをして思案顔だ。本人の癖なのか、膠着した試合展開の時にはよくこういうポーズをする。 「フォーメーションについても少し考えてきたのですが」  平岡から授かった4―4―2のフォーメーションと先発選手案について説明した。 「なるほど、面白い案ですね」  大葉は腕組みを解き、ホワイトボードに赤のペンで4―4―2のフォーメーションを書き込んだ。中盤はしっかりとダイアモンド型を為している。 「ということは、この布陣のキーマンはここですね」  左サイドラインに大きく張り出した左サイドハーフに二重丸を付した。縦に並べたツートップのうち、後ろに控えたセカンドストライカーに一重丸を付ける。 「では早速、今日の練習で少し試してみましょうか」

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