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 三日続けて教授の研究室を訪ね、四日目になって教授はロベルトに向かってはっきり言った。 「君はピアニストを目指しているのか……日常生活に支障ない程度に回復する見込みはあるが、職業音楽家としてはむずかしいな。君はここの法学部で学んでいたようだね。法学でなくても良いが何か別な道を考えたらどうだろうか」  専門家に厳しい判断を下され、半ば覚悟はしていたがロベルトは落胆した。教授の話の半分も頭に入らなかった。  授業に出ていたモーリッツを、ロベルトは医学部棟と法学部棟の間にある広場で待っていた。若者たちが仲間と大きな口を開けて笑い合ったり、難しい議論をしていたりする様子をぼんやり眺めていた。ここにいる若者たちは夢や希望がいっぱいで、自分とは大違いの青春を謳歌しているのだろう。  それに引きかえ、自分はどうだろう。勝ら手な真似をして自ら希望を潰えてしまった。ロベルトは打ちひしがれ後悔の涙が頬を伝った。  演奏旅行の前に師匠ヴィークから言われたことが、彼の頭にこだました。 「留守の間、教えたとおり地道に練習しなさい」 「ピアノの習得方法をわしが人生かけて探究した結果なのだからな」 「クララがわしの指導力の証明だ。偶然だと思うか? ほかでもない愛弟子としてずっと見ていたおまえならわかるだろう。だから単調なことでも丁寧にやるんだ、わかったな」

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