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「進路に関しては大学で国文学を学ぼうと考えてます」 進路指導の先生に私はそう言った。 「卒業後はなんか考えてる?」 「まだ考えてません。どこかの会社員でもなるのではと」 「そうか、分かった」 これ以上話すことはないのか私は職員室から解放された。 私の人生は高校を卒業したあとも平凡なのだろう。大学も平凡な大学で、就職する会社も平凡で、結婚するか分からないけど旦那さんも平凡で平凡な結婚生活なのだろうと勝手に決めつけている。 そして平凡に歳をとり、平凡に死ぬ。それが私の人生なのだろう。 坂ノ上卓 隣のクラスに木ノ下さんという女子がいる。休憩時間に廊下で見つけた。長い髪の眼鏡をかけたおとなしそうな子だ。友達が居ないのかいつも一人だ。その時は一人で窓の外を眺めていた。 何か物思いに耽っているようで、何を考えてるのか。僕は彼女が何処と無く気にはなっていた。 どんな子なのだろう。一度話してみたいな。 でも僕みたいな取り柄のない、外見も普通の自分と話してくれるだろうか。でも機会があったら声をかけてみよう。 「卓~。どうした?ボーッとして?」 「あっ、いや。勅使河原か」 友人の勅使河原が肩を叩いてきた。 「隣のクラスに気になる子がいるんだ」 「誰?」 「木ノ下って女子」 「知らねえな。好きなのか?」 「それは…分からない」 「好きだから気になるんだろうが」 「そうなのかな?」 「変なやつ。普通そうだぜ。で、どうすんだ、その木ノ下さん」 「今度話しかけてみようかなって」 「いいね。してみろ。恋の始まりだぞ」 弱ったな。単に話したいだけなんだが。本当に自分は彼女に恋してるのか? 話しかけるチャンスは意外にも早くやってきた。昼休み彼女は廊下の窓から外を見ていた。僕は普段昼休みは校庭で勅使河原たちとバスケットボールをするのだが、その日は勅使河原に事情を説明して断って教室に残った。 事情というのは昼休みにその木ノ下さんに会えるかもしれないから今日はやめとくということだった。 僕の感は当たった。彼女は今一人だ。チャンスは今しかない。 ドキドキしながら彼女の所へ行く。しかしここは冷静になろうと努めた。 「やあ」 僕は声をかけた。すると彼女は振り向いた。 「木ノ下さんだよね。僕は隣のクラスの坂ノ上っていうんだ。木ノ下と坂ノ上…面白いね」 彼女はその言葉に固まって動けないようだ。 「あ…ごめん。いつも一人でいるけど一人が好きなのかな?」 「別に。友達がいないから昼はこうして廊下で外見てる」 「そうなのか」 「何の用?」 彼女は聞いてきた。 「話でもしないか」 「何の話?」 「なんでもさ、趣味のこととか君自身のこととか」 「趣味は…本を読むことかしら?あとはないわ」 「何の本を読んだの?」 「村上春樹の『ダンスダンスダンス』」 「読んで面白かった?」 「うん。変な小説だったけど」 「そう」 「あなたは趣味は?」 「絵を描くことかな。君みたいな女性を描く。ペンでね。ペン画が趣味なんだ」 「ふうん。今度持ってきてみせて」 「いいよ。下手だけど」 「キャリア長そうね。本当はすごく上手なんじゃない?」 「最初に姉の顔を描いたんだ。そしたら姉がびっくりしてさ」 「そっくりにかけた?」 「そっくりっていうより、この絵はすごいって姉が親とか友達に見せたんだ」 「ふうん」 「それから絵を描くのが趣味になったんだ」

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