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木ノ下泉 翌日坂ノ上くんは自分が描いた絵を見せてくれた。 「あなたのお姉さんは見たことないからそっくりか分からないけど、これはその人の人柄や人間味まで投影してるわね。なかなか上手よ」 「君も描いてあげようか?」 彼は言った。 「私?描いてくれるの?」 「今度僕のうちにおいでよ。描いてあげる」 「へえー嬉しいな。なら今日行っていい?」 「いいよ。僕も帰宅部だし。バイトは休みだ。一緒に帰ろう」 ということで放課後、始めて誰かさんと下校した。 彼の家はわりと広い一軒家だった。木造の二階建て。 「突然おじゃましてすいません。木ノ下泉といいます」 「あら、はじめまして。女の子連れてくるなんて初めてだからびっくりだわ。どうぞあがって」 「母さんは仕事してて、お茶は僕が淹れるから」 坂ノ上君のお母さんは自宅でパソコンで仕事をしてるそうだ。 「ここがあなたの部屋?」 「そう。普通の部屋だけど寛いで」 私はベッドの上に座らせてもらった。 他にも何枚か絵を見せてくれた。ペン画でモデルもいれば想像して描いたりするそうだ。 「こんな女性居たらいいなって、思って描くんだ」 「女性のヌードの絵もあるね」 「男だからね。顔描くだけで満足しない。でも嫌らしく描くより美しく描きたいんだ」 たしかにヌードの絵だけど嫌らしさを感じない。良い絵だ。 「ヌードを描くとき画像検索するの?」 「そうだね。それを見て造形を覚える。記憶力で描くんだ」 「それでこんなに上手に?大したもんだね」 「ふふん、ありがとう」 「私のヌードも描くのかな?」 その質問に彼は恥ずかしそうに言葉を詰まらせた。 「描かないよ…そんなの嫌だろ?」 「最初は顔を描いてよ!」 「それなら任せろ。いま準備する」 彼はケント紙に下敷きを添えて漫画用のペンで机で私の顔を描き始めた。 その間。私は黙ってベッドに座ってまっすぐ坂ノ上くんを見ていた。 描くこと10分。できたようだ。 「はい!」 彼は描いたばかりのその絵を見せた。 「へえ~やっぱり上手だ。これ私だよ」 すごく上手だ。すごい。 そっくりな上に味がある。なかなか誰でも描けるわけではない。 「似顔絵師になったら?」 「それもいいな。でも美大とか行かない。独学でやりたい」 「坂ノ上くん好きよ」 「え?」 「こんな素敵な絵を描いてくれたんだもの気に入ったわ」 「そ、そうか。ありがとう」 彼は好きと言われてひどく照れていた。 「今度良ければお礼するからうちに遊びに来なよ」 「ありがとう。いつかお邪魔させてもらうよ」 「あのさ、良ければ友達になってくれない?私友達いないの」 「いいよ。僕で良ければ」 私は右手を前に出した。すると彼はその手を握ってくれた。