ハテナナハナシ
ブルーブラックライン 3

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「ランチセットのAとBで、飲み物はアイスコーヒー2つ。ランチと一緒でお願いします」  注文を終えるのを見て、私はアオちゃんにラインを送った。 『さっきの続き聞きたいです』 『映画?』 『難しいって何だろうなって思ったんです』 『ナギサさんはそう思わなかったの?』 『B級っぽいけど、けっこう面白かったと思いました』 『あれ、そんな単純に見ていいものだったの?』 『やっぱりアオちゃんがどう見たか聞きたいです』 『んーとね、最初は日常があって、危機が降り掛かってきたわけでしょ?』 『はい』 『そんで、その危機をチャンスにしようとして、うまくいきかけたんだど……』 『その先には恐怖が待ち受けていました』 『恐怖というより破滅。カタストロフィってやつ』 『カタストロフィ?』 『漢字にすると悲劇的結末とか破局とか言うの』 『確かに男は全てを失いました』 『家族も街も日常もね。でも、これってさ、男が選んだ結果なのかな』 『選んでませんか? 街は気持ち悪い魚を名物にしようとしたわけで』 『希望を見出そうとしたのは、みんな。男はそれにどう思ってたんだろう』 『ああ』 『ただ流されただけなんじゃないかな。みんなが言うから従うしかない』 『男は被害者ということですか』 『どうだろう。みんなの考えに同意はしただろうけど、トップが決めたことは絶対だっただけだろうし。でも、最終的には協力したわけだから、難しいところかな』 『そういう所を見てるんですね』 『ただの思い付きだから。あっ、そろそろ来るよ』  私にはコーヒーとペペロンチーノセット、アオちゃんにはコーヒーとペスカトーレセットが運ばれてきた。  ペペロンチーノは唐辛子がよく効いていて美味しかった。ペスカトーレはイカとかエビとかが美味しそうに見えた。  食べ終わって一息ついた後、アオちゃんからラインが入った。 『ナギサさんは面白いって言ってたけど、どういう所がそう思ったの?』 『いかにもホラー的だなって思ったんです』 『ホラー的?』 『アオちゃんも言ってたじゃないですか、希望を見出そうとしたけど、それが悲劇の入り口だったって』 『うん』 『掴み取った希望が反転して、登場人物が恐怖や苦悩や絶望する様子って、見てる人には凄い良いスパイスじゃないですか』 『作品を鑑賞する立場から見てたんだね。私は出てる人に少し入れ込み過ぎてたかな』 『いやっ、そんなことないと思います。アオちゃんみたいな見方、私は出来ないですから』 『そう?』 『そうですよ』 『ありがとう』  アオちゃんはスマホを置いた。 「街でもぶらぶらしようか」  目を細めながら私に語りかけたアオちゃんはすっかり落ち着いていた。  喧騒を過ぎた時間帯の大通りはモザイク模様だった。  コンビニやファーストフード店、オフィスビルや雑居ビルが並ぶ間に挟まるように、空きテナントの張り紙があちらこちらにあった。  けれど、歩くのはちょっと堪えた。真夏に比べれば大分弱い日差しも私にとっては強く感じた。遠くには陽炎が揺らいでいた。アオちゃんも熱で少しだるそうになりながら、周りをぼんやりと見ていた。  どこかにまた入ろうかと思っていたら、小さなゲームセンターが目にとまった。営業終了までもうすぐという張り紙の隣にあったUFOキャッチャーには、ぬいぐるみやキーホルダーがわんさかと積まれていた。  私はそれを指差した。アオちゃんもそれに気付いた。 「あのキーホルダー、可愛らしくて、私も欲しいけど、ああいうのって、得意な人でもなければ吸い込まれるだけじゃない?」  私は胸を軽く手でポンと叩いた。 「もしかして、自信あるの?」  私は財布から100円玉を2枚取り出した。  見込み通り200円で済んだ。2つ目を取り出して、アオちゃんに渡した。 「ありがとう。凄いね。ホントに上手いんだ」  私はぎこちないけど微笑むことが出来た、と思う。 「それじゃ早速」  アオちゃんは茶色い肩掛けかばんにオレンジのキーホルダーをしてくれた。似合っていた。  私も黄色いかばんに取り付けた。 「お揃いだね。ふふ」  アオちゃんも小さく笑っていた。

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