漢字徒然
「海」 第一話

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 始まりは、大学のサークルだった。  大して興味もないのに、私は音楽系のサークルばかり見漁って、そろそろ飽きてきたころだ。  私がなんでこんなことをしているかというと、幼少期からの腐れ縁が、いまだに私を使い走りにするからだった。  正直うざったくて、それでも私は彼女に逆らえない。それは、彼女の夢を潰したのが他ならぬ私だから。ずっと前のことなのに、彼女はひどく私を恨み続けている。  彼女だって音楽サークルに興味があるわけではない。これは私への当て付けなのだ。小学校四年生の夏、私は彼女の足に致命的な傷を残してしまった。バレリーナになる夢を抱いた彼女は、その夢を諦めた。  私は——密かに、彼女のバレエに惚れていた。それはいつしか、どこかでボタンを掛け違え、嫉妬へと変わった。  大事になるとは思っていなかった。麻薬のように嫉妬は私の体を蝕んで、正常な思考を奪った。事が起きてから、いや、起こしてから、我に返っても遅いことを知った。  私は、もう音楽を好きにはなれない。それをわかっていて、彼女は私に音楽に触れさせ続ける。  その嫌がらせを、私は仕方ないと受け入れてもいた。苦役に耐えることが贖罪にもなりうると、どこかで思っていたのかもしれない。

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