君の顔が好きだ。
昨夜はお楽しみでしたね? 5

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「まあ、ふったんならお前の自由だし別にいいんだけどさ」 一樹はそう言いながら寝っ転がった体勢から上半身を起こし、視線を銀治に向けながらスマートフォンを手にとりいじる。そして、表示された画面をこちらに向けながらにかっと笑いこう言った。 「新曲のデモできたんだわ」 「ああ、じゃあ作詞すりゃいいのな? どんな曲だ?」 「やっぱライブで盛り上がること考えてアップテンポのポップな曲」 一樹の夢は先に述べているようにミュージシャンで、一応作曲ができる。そして、一樹曰く、バンドの曲の歌詞は歌うボーカルが書くべきだということなので、ボーカルの銀治が作詞を担当している。現状鳴かず飛ばずの活動でしかないのだが、そんな感じでオリジナル曲で一樹と銀治は活動している。ライブハウスでライブをする場合、大抵出演バンドにはライブハウスよりチケットノルマみたいなものが課せられる。ライブの観覧チケットを売るノルマを課せられるのだ。ある意味、それがライブ代。チケットノルマを達成し、ライブのチケットを売り切っていればインディーズでも、CDデビューしていない素人でも観覧者に売ったチケット代で黒字で利益が出てお金がもらえることになっている。だが、ノルマを達成していなけらば未達成分は自腹になり赤字で、お金をもらうどころか払ってライブすることになる。当然、鳴かず飛ばずの一樹と銀治のバンドはライブのたびに赤字で自腹をきっているが活動自体は楽しい。銀治はそう思っている。だから、別に一樹と同じようにミュージシャンが夢というわけではないが赤字でもバンド活動をしている。最近は就活を始めた大学の先輩たちを見ていて、このままではいけない気もしているのだが、なんとなく一樹に引っ張られて活動している。 「しかし、あれだな」 「ん?」  いぶかしがる銀治のことをにやにや笑いながら一樹は楽しそうに笑っている。そして、こう言った。  「森川 夕だっけ。その面白い女の子。一回ふられた程度でこりて諦めるかな? 折れずに、またアタックしてこねーか?」  「不吉なこというな…」  そう言いながら、銀治自身、ありえると思った。だから、嫌な予感がした。  そして、その予感が的中したのは、次のコンビニのバイトの時だった…。

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