君の顔が好きだ。
昨夜はお楽しみでしたね? 4

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 「斉藤和義じゃねーかっ‼」  時間はさかのぼって数時間前の深夜帯。突然の告白の理由を知った瞬間に、思わず銀治はそう叫んだ。防犯目的でコンビニの深夜勤は二人組制だが、もう一人は出勤しているが不真面目なので裏に引っ込んで新刊の週刊漫画雑誌を読んでいる。よって、現在、この場には二人のみ。突然告白してきた女の子は何故か満足そうに笑顔でうなずいていてニコニコしている。  銀治はというと、今まで会ったことのない人種の目の前の告白女に困惑しっぱなしである。告白女はそんな銀治のことなど意に介さず、マイペースにこう言った。  「斉藤和義のその曲を知っているとは、趣味が合うようですね。ますます、私の彼氏に相応しい…」  「いや、ちょっと待って。とりえあず、名前教えてくれますか?」  「あっと、そうですね。まずは二人のこれからのためにお互いに名前を知り合わないといけませんね…」  「やっぱり、俺の名前も知らないんですよね…、それで告白」  正直いってカルチャーショックすぎる。この人、帰国子女かなんかだろうか。だから、感覚が自分からしたらぶっ飛んでいて理解不能なんだろうか。銀治はそう思いながら、目の前の告白女をまじまじと見つめた。  背はおそらく160センチ前後、スレンダーで髪型はセミロングでボブっぽい髪型をしている。髪は染めておらず、恰好は白いカーディガンを黒いTシャツの上に羽織、青いジーンズのズボンに赤いスニーカーを履いている。顔は正直いって整っていて、美人というか可愛いという言葉がぴったりのルックス。だが、そういったプラス要素を消し去りきる行動をされているので、銀治はかなり複雑な心境である。  普通は可愛い女の子に告白されるとか嬉しいことのはずなのに、突然のお互いの名前も知り合いすらしていないのに愛の告白というトンデモ事態に、心は全然喜んでいない。そんな銀治の心境は置いてけぼりで、告白女はニコニコ笑いながらこう名乗った。  「私の名前は森川 夕。アナタの運命の相手の名前は森川 夕です。脳髄の奥深くまでしっかり刻み込んでください‼ アナタのお名前プリーズっ‼」  「ええと…、俺の立花銀治です。よろしくお願いします?」  銀治は思わず勢いに押されてそう名乗ってしまった…。しかし、すぐに冷静になりこう叫びかえした。  「運命の相手じゃねーよ‼ 初対面でいきなり告白されても付き合うわけねーだろ‼ 俺、それに他に好きな人いるし‼」  「…どうやら勘違いされているようですね?」  そう言って告白女、森川 夕は不敵な笑みを浮かべ、ニヤニヤしながら何故か勝ち誇りながらこう宣言した。  「付き合ってもらいますと私は言いましたよね? これは決定事項の命令で拒否権はありません‼ 決定事項です‼」  「うん、全力で俺アンタふるわっ‼」  そんな感じが、立花銀治と森川夕のファーストコンタクトだった…。

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