「告白…?」 奏はそう不思議そうにつぶやきながら、ラーメンのチャーシューを齧りそしゃくした。竜一も不思議そうにしていた。銀治はむせた息を整えながら一樹を睨んだ。睨まれた一樹とはいうと、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、行儀悪く箸で銀治を指しながらバンドメンバーに言った。 「こいつ、バイト先のコンビニで最近告白されたんだってさ」 「マジで…? 今ロックバンドってだけで流行りじゃないとか言われるし、売れないバンドマンとかモテねーぞ? 売れないバンドマン、貧乏なの常識だし」 「いや、相手の子、多分売れないバンドマンだって知らねーぞ?」 「ああ、だからか」 当事者の銀治そっちのけで会話が進んでいく。奏はレンゲでラーメンのスープを少しすすりながら納得がいったようにそう言った。そして、視線を銀治に向けながら言葉を紡ぐ。 「多分、ルックス理由での告白でしょ? じゃなきゃ売れないバンドマンになんて普通の女は告白しないよ? 下手すりゃ紐になる事故物件じゃん、売れないバンドマン。銀治、ルックスだけはプロ級だもんね」 「そーいうもんなの?」 「私はそうじゃないけど、ルックスのいい男が彼氏だったら自慢できるからって、そういった理由で付き合う相手選ぶ女の子たまにいるよ? 色んな考えの子がいるから」 「まあ、男でもルックスで付き合いたがる子ざらにいるからな。後、胸」 「…巨乳好きも嫌われるけど、貧乳好きもロリコン扱いで嫌われるよ? アンタの彼女のスタイルからそれバレバレ」 「昔の偉人は言いました。貧乳は希少価値だと‼」 「…オタクネタ言うから竜一モテねーんだよ」 「ネタわかるお前もオタクじゃねーか」 「…当事者そっちのけで話題進んで、挙句それてるじゃねーか…」 銀治はそう言って、軽く頭をふった。そんな銀治を見ながら楽しそうに一樹は笑っている。そして、店内を見渡し、壁に飾られているサイン色紙を箸で指しながら言った。 「憧れて焦がれるのは、銀治の自由。でも、憧れの人はもう、こんな場末のラーメンでバイトしてるような存在じゃない。それ、いい加減本当の意味で理解した方がいいぞ?」 ダッテ、今ノオマエカラシタラ、相手ハモウ立派ナ、高嶺ノ花ダ。 一樹はそう言ってラーメンをすすった。銀治はその言葉を溜息をつきながらうなずいて言った。 「わかってるよ、自分でも」 そういって、今感じている感情を振り払うようにラーメンをすすった。そうして、夜はふけていった。
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