豚だった男
第5ブー 大ピンチ

 山田コーポレーション本社ビル6階の大会議室。ビルの中で3番目に広いこの会議室で、2人の社長による会議が始まった。 「豚みたいな顔をしてますねぇ。まるで本物の豚のようだ」  そう言ったのは、山田コーポレーション社長の山田良一。会議の相手が自分よりも格下ならば、まず最初に、相手の悪口を言うのが、山田のお決まりになっている。 「そうなんですよ。よく言われます」  川谷カンパニー社長の川谷健介は、笑って応じる。 「すいませんなぁ。うちの部下が、場所取りをミスして。こんな広い会議室を使うよりも、豚小屋で会議した方が、川谷さんにとっては、よかったでしょうにね!」 「あぁ、そうですね。たしかに、この会議室は、2人で使うには、広すぎますしね」  川谷は、そう答えながら、ポケットの中の小型ナイフを強く握りしめた。 「じゃあ、さっそく、資料を見せてもらおうかな」 「はい!こちらです!」  川谷は、持ってきた資料を、山田に渡した。 「どれどれ……あぁ、なんか貧乏企業の資料って感じがプンプンするなぁ」   山田は、そう言いながら、資料をめくっていった。  「あぁ、ダメダメ。こういうなんはダメ。全くダメ!ツッコミどころが多すぎるぜ!」  次から次へと文句を言う山田は、川谷の資料のダメなところを見つけるのに夢中になっている。  川谷は、気づかれないように気をつけながら、ゆっくりと山田に接近していった。  そして…… 「うわっ!!何するんだ!!」  川谷の奇襲は、失敗。山田に身をかわされてしまった。 「お!お前!俺を、殺す気なのか!?」 「そうだ!」  川谷は、そう言うと、もう一度山田に襲いかかった。 「うわっ!!この野郎!」  山田は、また身をかわすと、川谷の顔を思いっきり殴った。  川谷は、倒れ込んで、手に持っていたナイフを離してしまった。 「しまった……」  山田は、川谷のナイフを奪うと、 「清水!!おい!清水!!」  と叫んだ。  すると、会議室の扉が開き、一人の男がやって来た。男の顔には、ライオンのような形で、毛が生えている。 「どうなさいましたか?山田社長!」 「こ、こいつが、俺を殺そうとするんだ!こいつを、やっつけてくれ!」 「了解しました」  男は、そう言うと、服を脱ぎ、四足歩行の状態になって、川谷に向かって駆け出した。 「ま、まさか……」 「ガルゥゥ!!」  川谷は、男に、いや、ライオンに、噛み付かれてしまった。川谷の体から大量の血が出てきた。 「はっはっはっはっ!凄いだろ!清水はな、人間みたいに喋ったり歩いたりできるのに、DNAはライオンと完全に一致していて、ライオンみたいに噛み付いたりもできる、ライオン人間、いや、人間ライオンなんだ!!清水!そのまんま、こいつを食い殺してしまえ!!」  山田は、笑いながら言った。  だが、清水は、川谷に噛み付くのをやめてしまった。 「おい!どうした?清水!」  訊かれた清水は、二足の状態に戻って、 「社長!こいつは、人間ではないです。豚です」  と言った。 「な、なにー!?」 「おそらく、俺と同じ、人間みたいな動作ができる動物・ヒューマニマルかと……」 「なにー!?豚のヒューマニマルだと!?」 「はい。おそらく……」 「まあ、いい。人間でも豚でも、どっちでもいい。こいつは俺を殺そうとしたんだ!とにかく殺せ!!」 「了解です!」  清水は、再び四足の状態になって、駆け出した。  川谷も、ライオンから逃げるため、四足になった。  豚は、ライオンから逃げ続けた。ライオンは、鋭い爪で、豚に襲いかかる。  会議室にある机や椅子は、ライオンの爪によって、ボロボロに壊されていった。  やがて、豚の体力の限界が来て、豚は、これ以上走れなくなってしまった。 「あーはっはっ!豚こどきが、百獣の王ライオンから逃げられると思ったのか!?あっはっはっはっ!」  山田は、大きな声で笑った。 「くそー!この、人殺しが……」  川谷は、ボソッと呟いた。 「あ?人殺し?俺のことか?え?…………ま、まさか!!」  山田は、ハッとした。 「お前、40年前の、俺が皆殺しにした家族が飼っていた、あのペットの豚か!?」 「そ、そうだ。どうして、あの家族を、皆殺しにしたんだ?」  川谷は、残りわずかな力を振り絞って、言った。 「そういうことだったのか。ってことは、お前は、俺に、復讐をしに来たんだな。じゃあ、あの時、ペットのお前も殺しておけばよかった。……いや、まあ、いいか。お前も今死ぬから問題ないか。40年前の俺はな、ストレスが溜まってたんだ!誰かを殺してみたかったんだ!それで、里田市の岡本一家を皆殺しにする計画を立てて、実行した!ただそれだけのことだ!」 「そ、そんな理由で……」  川谷に、強烈な怒りが込み上げてきた。 「さあ、清水!とどめを刺してしまいな!!」  ライオンが、川谷に襲いかかる。川谷は、もうダメだ、と思った。  と、その時、 ズドン!!!!  会議室の扉が壊されて、4人の男と1匹の豚が入ってきた。 「て、てめーら!だ、誰だ!?」  4人の男は、それぞれ、赤、青、黄、緑、の服を着ていて、豚は、ピンクの服を着ている。  そのうちの一人、赤い服の男が 「正義のヒーロー!!アニマルレンジャー!参上!!私の名は、バードレッド!!」  と言った。  それからさらに、 「私の名は、ドッグブルー!!」  と、青い服の男。 「私の名は、キャットイエロー!!」  と、黄色の服の男。 「私の名は、うしグリーン!!」  と、緑の服の男。 「ブヒブヒブヒブヒブーブー!!」  と、ピンクの服の豚。 「『私の名は、ぶたピンク!!』と言ってます」  と、赤い服の男が、通訳をした。  わけの分からない状態だが、川谷は、ピンクの服の豚の姿を見て、嬉しくなった。  ピンクの服の豚は、川谷の豚仲間・中島哲也だった。  

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石嶋ユウ 2020/08/01 07:58

“豚だった男”とうとうヒーローになってしまったぞ。 コレ、一体どうなるんだ? 続きが気になる。(笑)